さらに、蔦重の行動力にも舌を巻く。
「とにかく真っすぐ、全力でやればいい」
「人間くさくて、すごく情けないところもありますが、行動力がすさまじい。第1回のラストで田沼意次(渡辺謙)に会うシーンがあります。今でいうと一国民が総理大臣に向かって意見を言うようなもの。毎回、彼のその行動力、そして“うまくいかないなら、次!”と切り替える発想力に驚かされます。
蔦重は、みんながどこかで“そう生きたい”と思っているような人間で、そこを深掘りすると“誰かのために”がある。人間としてすごくリスペクトしています」
吉原細見(吉原の案内書)の発行、書店作り、新人作家や浮世絵師の発掘、洒落本や版画の出版……。次々と新たな挑戦をしていく蔦重だが、その都度“出る杭は打たれる”。
「ことごとくやられているので(笑)。蔦重として生きているときは自分自身は排除していますけど、どこか共感しつつ、“うまくいかねえな”と思いながらやっています」
田沼意次役の渡辺謙とは1月公開の映画『国宝』で、親子役で共演している。
「『国宝』のときに食事に行って、いろいろとお話をさせてもらって。当時、自分は27歳だったのですが、謙さんからは“ちょうど流星と同じ年頃に俺も(大河ドラマ『独眼竜政宗』〈'87年〉の主演を)やった”と。そして“とにかく真っすぐ、全力でやればいい”という力強い言葉をいただいたので、その言葉を信じて」
蔦重の役作りは、彼が出てくる作品や資料を見たり、実際に生まれた場所に足を運んだり、専門家の話を聞いて、イメージを膨らませてきた。
「あと阿部寛さんが(映画『HOKUSAI』'21年で)蔦重をやられていたのでいろいろとお話を聞いたり」
阿部とはドラマ『DCU』('22年)で共演している。どんなアドバイスが?
「“流星らしく”と(笑)。でも、阿部さんのいろんな思いが込められてるので、それをちゃんとくみ取っていければと思っています。また、阿部さんが生きた蔦重は人生の後半のほう。
その部分は森下佳子先生の台本がまだ来ていないので、どうなっていくかはわかりませんが、阿部さんの蔦重を含めて落とし込みながら、自分にしか生きられない蔦重を生きられたらと思っています」
蔦重は最終的に江戸のメディア王となるが、横浜はどんな“王”を目指しているのだろう?
「うーん。でも、王になったら、それで終わってしまうので。自分は王にはならず、いつまでも高みを目指したいと思っています。すべてにおいて」
蔦重として生きる、横浜流星のサクセスストーリーの幕が上がる─。
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』
毎週日曜夜8時~(NHK総合)ほか