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詩人の谷川俊太郎さんが静かに息を引き取ったのは、'24年11月13日のこと。
胸を打つ、あまたの言葉を残してきた谷川さんが生まれ育ったのは、東京・阿佐ヶ谷。そこに、谷川さんが20年以上も通い続けた店がある。
オープン当初から来店
「谷川さんと出会わなければ、今の僕はいなかったはず」
そう話すのはイタリア料理店『松下雄二屋』オーナーの松下晋司氏。出会いは、店がオープンした'98年に遡る。
「35歳だった僕は、1500万円の借金をして、店を構えたんです。不安もありましたが、ビラを配った効果もあって、オープンからしばらくの間は毎日、満席状態でした」(松下さん、以下同)
だが、開店から半年がたったころ、異変が起きる。
「パッタリとお客が来なくなったんです。何が問題かまったくわからず、途方に暮れました。このままでは借金を返済できず、自己破産をすることも頭をよぎりました」
そんな中、アルバイトの1人が、こんなことを話した。
「“谷川俊太郎さんが来てくれているんですよ。自信を持ってください”と言うんです。客足が途絶えても、谷川さんだけはオープン当初からたびたび来店してくれていました。きっと、何か理由があるはずだと思い、聞いてみたんです。“なぜ、このお店に来てくれるんですか?”と」