宮崎 そうですね。なので、何でもいいから藁をもつかむ気持ちで、とりあえず後悔しないようにやってはみましたけど、私は結果に結びつきませんでした。あと、腸が硬くて便秘ぎみだったから腸のマッサージもしました。これは2時間マッサージしてもらってお腹が柔らかくなり、身体が温かくなった実感がありました。

 最後の移植前は、毎日カイロを身体の前後に2つずつ貼って、靴下も4枚はいて。身体を冷やさないよう、雪だるま状態でした(笑)。

治療に夫が同席する率は80%

西川 もうこれが最後、という気持ちだったんですね。

宮崎 そうです。もう凍結胚もないわけだし、ここまでやったんだからと、移植の前日に夫とお寿司屋さんでたらふく食べました。“今まで頑張った分の打ち上げだ!”って(笑)。

西川 旦那さんも治療には協力的だったみたいですね。

宮崎 診察には毎回、同席してくれました。

西川 最近は夫婦ご一緒というカップルが増えました。私のクリニックでも、昔は80%の旦那さんが来なかったけど、今は同席する旦那さんが80%ですから。

宮崎 待合室も結構、夫婦でいらっしゃっている方が多いですよね。私の夫も不妊検査を受けて、問題なかったから“先へ進もう”って。

西川 検査結果がよくなくても、気にしなかった?

宮崎 すごくあっけらかんとしていて(笑)。“ダメだったのなら少し休もう”とか“ちょっと旅行でもしよう”と言ってくれたり。

 これで最後、と決めたのも“もともと2人で楽しく暮らそうと結婚したのだから、子どもができなくてもそれでいいじゃん”と言ってくれて。すごく気持ち的に楽でした。

西川 息子さんを授かった今はどんな感じですか?

宮崎 ずっと面倒を見てくれています。保育園には預けないで、自分がすべてやる、って(笑)。

西川 いい旦那さんですね(笑)。宮崎さんは高齢出産でいい結果が出ましたけど、もし、治療を始めたころの41歳の自分にアドバイスできるとしたら、どんな言葉を送りますか?

宮崎 41歳のスタート前の私には、とりあえず忙しすぎるとうまくいかないから、楽しみながらゆっくり時間をつくってと。31歳の私には、今後本当に苦労するから卵子だけは取っておきなさい。ですね。今、通っている大学院の同級生が半分は外国人なんですけど、中国人の女の子は30歳のときに、卵子を取って保存しておきなさいと親に言われたそうです。

 私の親は、不妊治療をすることに対して“そんなことをしなければ子どもができないの?”という考え。昭和の考えですよね。海外の人たちは仕事が忙しくて子どもを産まないなら、若いときに卵子だけ取っておきなさい、とお金を出してくれるというんですから。

西川 卵子も取っておくなら若い卵子じゃないとダメ。30歳でなら1回の採卵でいい卵子がたくさん取れる確率が高いですから。

宮崎 そうですよね。本当に私も友達に言ってます。今は自治体からも補助金が出るし、年間数万円で冷凍保存できる。

 パートナーを見つけるのが遅くても、質のいい卵子さえあれば妊娠する確率はグッと上がるよ、って。

西川 今は『社会的適応』といって卵子を保存することが認められていますから。保険は利かないけど自治体や企業が補助金を出してくれるようにもなったしね。

宮崎 働く女性にはいい制度ができていますよね。不妊治療は“またダメだった”“どうしてうまくいかないの”と自分を追い込みがちだけど今、頑張っている方には日々を楽しく送ってほしい。

 子どもだけが自分を幸せにしてくれるわけではないのだから、いちばん大切なのは自分自身だということを忘れないでほしいなと思います。

取材・文・撮影/蒔田 稔

西川吉伸 西川婦人科内科クリニック院長。医学博士。医療法人西恵会理事、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、大阪産婦人科医会代議員ほか。

宮崎宣子 元日本テレビアナウンサー。'12年に同社を退社、フリーアナウンサーに。'18年、自身がプロデュースするハーブの会社『EMARA』を設立、代表を務める。