かつては“紅白不要論”も

 かつて『紅白』に対抗する裏番組を作るため頭を悩ませていた元民放プロデューサーは、こう語る。

「60代、70代の重鎮たちからK-POP、演歌からポップス、懐かしい曲まで盛りだくさんの内容は、今回のテーマ『あなたへの歌』どおり、幅広い世代で楽しむことができたと思います。確かに『紅白』を1年の締めくくりとして楽しみにしている田舎のおじいちゃん、おばあちゃんには、日本語に聞こえないような曲もあると思いますが、それでもK-POPやラップのあのノリのいい映像を見ていれば意外と楽しめるものです。実際に“面白かった”と言っている視聴者は多いですから」

紅白で特徴的なドレスを着用した橋本環奈(NHK公式YouTubeチャンネルより)
紅白で特徴的なドレスを着用した橋本環奈(NHK公式YouTubeチャンネルより)
【写真】「裸に見える」とSNSで話題になった橋本環奈のドレス

 あれもこれも、何から何までぶちこんだ“ごった煮”のようだったという批判的な声も出ているが、視聴者層を1つに絞ることなく、お年寄から若者まで楽しんでもらうことを考えた場合、“ごった煮”になるのは仕方ないことだという。ただ、“味付け”はしっかりしているので、表現としては“寄せ鍋”の方がピッタリではないかとも。そして、

「放送開始から何十年経っても毎回ニュースになって、視聴率云々が騒ぎ立てられる番組なんてそうそうないですよ。紅白というのは、やはりものすごい存在だと思います。しかも毎年、打ち切り説が出ていたのに、結局なくなる気配はゼロ。もはや単なる歌番組ではなく、1年を締めくくる一大イベントで恒例行事の“歌謡バラエティー番組”です。視聴者もそう認識しているんじゃないでしょうか」(同・元プロデューサー)

 確かに、毎年のように出ていた“紅白不要論”、つまり打ち切り説は聞かれなくなった。熾烈な視聴率争いを繰り広げていたころは、各民放は紅白に対抗し、なんとか打ち負かそうと特番を組んでいたこともあった。しかし、視聴率の意味合いが薄れてきた現在、紅白に対抗して番組を作ろうという動きはなくなったという。

 使う材料を変えて家族で味わえる“寄せ鍋”。同様に、盛りだくさんとなった『紅白』も年末の風物詩として、幅広い年齢層で楽しむことができるようになったのではないだろうか。