作品のバイプレーヤーとして、座長のサポートに徹していく。一方、自身が座長を務める場合はまた違う。
「どちらかというと舞台で座長をするほうが慣れてはいて。誰か座長がいると、やっぱり座組の空気もその人次第になるじゃないですか。でも自分が座長のときはあまり周りに気を使わせたくないし、気を使わせないやり方をこれまでの経験で学んできた。だから自分が座長でいるときのほうがそこは楽ではありますね」
「常に新しいことにチャレンジしていきたい」
現場ではムードメーカーで、共演者を誘って飲みに繰り出すこともたびたびだ。そこはバイプレーヤーでも座長でも変わることなく、率先して役者仲間と交流を持つ。旅公演で地方へ行けば、現地の人間とも気安く打ち解ける。
「影響を受けたのは俳優の小野武彦さん。前に地方の仕事で小野さんとご一緒したとき、“飯食いに行こう!”と誘ってくださったことがあって、以前仕事で来たとき、なじみになった店があるからと。
そのとき地元のお店の方々が“お帰りなさい!”と言って、ものすごく歓迎してくれたんです。そうやって分け隔てなくいろいろな人と関係性を築ける俳優さんってすごいなと、自分も小野さんを見習わなきゃと思うようになりました」
今では日本各地に「お帰りなさい!」と言われる店ができた。その数、全国で10か所以上、と話す。
「松本もすごくいいところで、おいしいお店がいっぱいある。この公演期間中に、“お帰りなさい!”と言ってもらえるお店ができたらなと思っています(笑)」
主演舞台『殿様と私』は2月に松本、その後、大阪を巡る。本作で始まる50年の大きな節目、どんな思いで過ごすのか。
「“50周年おめでとう!”ではなく、その次の60年に向けた年になればいいなと思っていて。殿様同様、自分もいろいろ時代にはついていけないところはあるけれど、やっぱり役者として常に新しいことにチャレンジしていきたいという気持ちが強くある。
そこで新たに得たものを、この先につなげていきたい。また次の10年に向かって進んでいく、その一歩目となる大切な年にできたらなと思っています」
舞台『殿様と私』
2月13日~ 2月16日、まつもと市民芸術館小ホール。2月28日~ 3月2日、近鉄アート館にて。詳細はまつもと市民芸術館チケットセンター
取材・文/小野寺悦子