死生観の変化
プライベートでは'04年に担当した『HOT'nHOT お気に入りに追加!』にナレーターのお姉さんとして出演していた声優の西田裕美と出会って'07年に結婚、'19年には25年勤めたニッポン放送を退社、フリーとしてホリプロに所属することとなった。
「働き方改革で週休2日となったこと、先輩の高嶋ひでたけアナから『フリーにならないの?』と言われたこと、どうしようか考えていたときに妻から『オマエのキャラは、年齢重ねて得するキャラでもねーだろ』と強く背中を押されたことで決めました。
結果的にコロナ禍の直前でしたね。あんな100年に一度みたいな出来事、誰も予想できないですから、あのタイミングじゃなかったらフリーになってないと思います」
昨年3月には学生の面接対策のための「垣花アナウンススクール」を開講した。
「僕、基本的に人のいいところを見つけるのが得意なので、学生のいいところを見つけて、それにはどのエピソードをどう話したら面接で受かるか、自己PRをどうしたらいいかということを一緒に練ったりしています。
今の大学生は結構打たれ弱いんだけど、みんな僕なんかよりよっぽど優秀なんですよ。なのでそれをうまく出せるようサポートしてあげるのが僕の仕事なんです」
現在は月~木曜の午前中に『あなたとハッピー!』、'21年からメインMCを担当する『5時に夢中!』(TOKYO MX)が月~金曜の夕方、『ゴッドアフタヌーン』が土曜の11~13時と、すべて生放送の番組に出演中だ。
「平日は朝4時に起きて、新聞を読みながら準備をして、ニッポン放送には6時10分過ぎに着いて8時から生放送、11時に終わったら一回家へ帰って飯を食って、必ず30分ぐらい昼寝します。他に仕事が何もなければMXに15時に入って17時から生放送、18時に終わったら家に帰ってきて、アナウンススクールの生徒とリモート面接をやっています」

そんな垣花のこれまでの人生の目標は「一日でも穏やかに長生きしたい。未来があることが大事」だった。
「幼稚園ぐらいのころから人はなんで死ぬのか、死んで自分の意識がなくなるって怖いなと思って、親に聞く子だったんです。そうしたら父が『みんな生きたいと思っていても、地球上に人があふれたら困るだろう。だから順番がある。仕方ないんだ』と教えてくれたんです。それでまたすごくショックを受けたことで、長生きして未来がある人生を目指していたんです」
しかし今年1月に亡くなった森永さんの生き方を見て、死生観が変わったという。
「ギリギリまで完全燃焼してるモリタクさんが亡くなったのを身近で見て、生きることの先に普通に死がある、それは特別なことではないんだというのが、なんかこう、いいものだなと思ったんです。
別にあの世があるとは言わないけど、自分が生き切ったら、モリタクさんとあの世でも遊べそうな気がするなと思わせてくれた。だからモリタクさんの存在は本当、僕にとっては大きいんですよ。アナウンサーを続けられたのはモリタクさんという聞き手、ツッコむ相手がいたからだし、それで番組が成り立ったというターニングポイントになった人で、結果、死に方まで見せてくれた。
そんなモリタクさんみたいに日々真剣に生きてると、ニュースに対して疑問や怒りを持って、世の中に言いたいことがいっぱい出てくるじゃないですか。そういうところをこれからもまねしていきたいし、疑問や怒りを自分なりにキャッチして、リスナーや視聴者の気持ちをすくい上げられるような番組ができたらいいなと思っています」
そんな思いを抱きながら、垣花は今日もマイクに向かう。これまでの失敗を糧に、そこから得た優しさと強い気持ちを視聴者とリスナーへ届けるために。
<取材・文/成田 全>