世代を超えて歌われる『TOMORROW』
今年1月、岡本さんの代表曲『TOMORROW』があらためて話題となった。関西電力送配電による、阪神・淡路大震災から30年を振り返るテレビCMが流れ、この曲がBGMとしてカバーされていたのだ。
「若い人がカバーしているのを聴くと不思議な感じとうれしい気持ちでいっぱいになります」
「涙の数だけ強くなれるよ」というフレーズから始まるこの曲は、年代を問わず、多くの人を励ましてきた。この歌詞は、育ての親の祖父から岡本さんに届いた手紙がインスピレーションとなっている。
「私は歌手としてデビューするため、家出同然で東京に出てきました。
手紙には『やるからには頑張りなさい』『涙が多いのが人生だよ』と書かれていて、苦労が多かった祖父の言葉が胸に響いたのです」
一方で、岡本さんは「セットリストから外したい時期も数年ありました」と打ち明ける。
「私はもともとバラードを歌いたくて、シンガー・ソングライターを目指しました。
『TOMORROW』もミディアムバラードとして制作したのですが、プロデューサーの希望でアレンジがガラリと変わり、それが大ヒットしたことに複雑な気持ちがあったのです。
でもライブで『TOMORROW』を歌わないと、お客さんはやはりがっかりされます。他の曲も聴いてほしい、認めてほしいと思ったこともありました」

しかし、15周年、20周年と年月を重ねることで、その思いは変化していった。
「この曲を聴いた方たちからたくさんの感謝のメッセージをいただくので、その人たちのためにも毎回歌い続けなければと迷いがふっきれたのです」
最近はコンサートに親子で来場するファンもおり、世代を超えて楽曲が受け継がれている実感も大きい。
「2000年以降はマイペースにリリースしてきましたが、楽曲制作はいつの間にか習慣みたいになっていて、ストック曲がたくさんあるのです。
曲は頭の中にパッと浮かんだものを形にし、歌詞は友達との会話や日常生活の中から生まれることが多いですね。30周年を機に少しずつ出しながら、そして新たに浮かんだものもまぜながら、新曲をお届けできればいいなと思っています」
近年は尾崎亜美さん、澤田知可子さん、中西圭三さんなど、先輩アーティストとの共演コンサートも多い。
「ふだんはカバー曲をほとんど歌わないのですが、共演の際には中島みゆきさんや米米CLUBの曲なども歌っています。本番のときはステージの袖で勉強させていただく気持ちで、憧れの先輩との共演を楽しんでいます」