野獣先輩人気は中国政府へのささやかな反抗!?
しかし、野獣先輩は、本名や今どこで何をしているかは全く知られていない。
この事象について、ネットでは様々な反応がある。
《日本のネット映像はアクセスしやすい》《中国の人は下ネタが大好き》などの理由を分析する人や、《日中友好の架け橋》と揶揄する淫夢ファンもいる。
また、「中国では同性愛は禁忌であることから、このコンテンツは政府へのささやかな反抗になっている」と、“自由・解放の象徴”と捉えられているという説も出ている。ミームの生まれた背景を知っていると困った話ではあるが、検閲や規制の厳しい中国においての「ガス抜き」になっている向きもありそうだ。
野獣先輩を中心に現在もはミームとして現役であり、その量や種類が膨大なことから全体像を把握している人も少ない。
さらに広まりすぎたことから「ゲイ向けポルノコンテンツ由来」であることを知らない人によって、しばしば一般向けコンテンツに淫夢ミームが“混入”してしまうこともある。
『淫夢』ムーブメントにはいくつかの問題点があり、インターネット上では「悪しきネット文化」としてしばしば物議を醸してきた。
そもそもゲイ向けコンテンツを揶揄・嘲笑するという差別感情が根底にあり、さらに野獣先輩は一般人で、彼や他の出演者の写真を使った二次創作は立派な「人権侵害」である。また、淫夢好きの人は「淫夢厨」と呼ばれ、しばしばそのマナーがネット上にとどまらない騒ぎを起こしてきた。8月10日を「野獣の日」として撮影現場を“聖地”として現地に集まる「野獣オフ」は参加者同士のトラブルで警察沙汰になったことも。
前述の多田野氏は騒動後、アメリカのマイナーチームからプロ生活をスタートし、2007年に日本ハムから指名を受け入団するという不屈の野球人生を送ったのだが、ことあるごとに『淫夢』出演をミーム的に擦られてきている。
中国で有名な日本人といえば、長らくセクシータレントの蒼井そらが君臨していたが、現在のトップは野獣先輩になりつつあるようだ。人権的に微妙な話であるので、それを超える日本人が出てくることを願ってやまない。
<取材・文/白石優>