「オレが愛嬌ふりまく人じゃないって、知っているじゃないですか」
と、苦笑いでカメラマンに語りかける綾野剛。午前の早い時間からスタートした写真撮影。現場に到着すると、スタッフひとりひとりに「おはようございます」と、微笑みながら声をかけていく。その流れで"カメラに向かって愛嬌を"とリクエストしたカメラマンと談笑しつつ「今回の作品はわりと自由で、気分が楽なんです」
同名の大人気コミックが原作の映画『新宿スワン』では、「ただバカで、一生懸命で純粋」な主人公・白鳥龍彦を演じている。
一文無しであてもなく訪れた新宿で、ある出会いからスカウトの世界へと足を踏み入れていく龍彦。"俺がスカウトした女性は、必ず幸せだって言わせます"と啖呵を切りながら、底辺からのし上がるために女性たちに声をかける。
「いま、路上でのスカウトは迷惑防止条例違反になっているので、肯定はできません。でも、役柄を通して、声をかけられた人の表情の変化を感じることができたのは、なかなかない経験でした。単純に、人と人とが会話をつなげていくところからスタートする」
声をかけた女性たちが店で人気者となり、売り上げをあげていくことで、自分自身の立場も上がっていくスカウトの世界。女性を見抜く力を綾野自身も持っているかと聞くと、
「いや、ないです。スカウトって、声をかけた女性を管理しないと自分の首を絞めることになる。例えば、女性がお店のお金を盗んで逃げたら、ぜんぶ背負わなくちゃいけない。その審美眼が、僕が演じた龍彦にはあるかといえば、ないです」
それじゃ、誰かから"管理されている"と感じることは?
「生命体として僕たち男は、管理される側だと思います。圧倒的に生命体として勝っている女性からしか、生まれてくることができないので」