母性、執着、溺愛、暴走……。松下は恵子が注ぐものを“狂愛”と呼ぶ。
「撮影前は、共感を得るのは難しいと思っていたんです。でも、恵子を演じ続けていると“違うかも”と思い始めてきましたね。“絶対ありえない、ありえない……いや、ともすればあるかも?”みたいな。自分も気をつけなきゃとも思うし(笑)、たったひとつが狂うと全体が狂っていくような怖さ、危うさ。そして、ただ狂っただけではなく、愛情がそこにはある。狂愛には怖さ、切なさ、悲しみ、喜びも含まれているので、見ている方の情緒も大変だと思います(笑)」
松下由樹の美しさの秘訣
1983年のデビューから40年以上。連ドラ主演は『大奥〜第一章〜』(2004年)以来、約21年ぶりとなる。
「言われて“あ、そうだったんだ”っていうくらい。今回の作品は主役であることよりも、吉川恵子に重きを置いた感じが自分の中にはありました」
インタビュー中は笑いが絶えず、作品への真摯な取り組みとともに温かな人柄が感じられる。現在56歳、その自然体な美しさの秘訣を尋ねると、
「やっぱり女性は年齢が上がっていくと、いろんなことを気にするようになりますよね。マイナス思考になっちゃったり。でも、受け入れると言ったら大げさすぎるんですけど、自分で“良し”としてあげないとなって思います。人は褒めてくれないかもしれないけど(笑)、自分を卑下する必要もないし」
さらにこう続けた。
「そもそも年齢を重ねる中で、培ってきたものだってあるわけで。そういうプラスを、いいほうに考えたほうがいいかなとは思いますね。今回、野村くんをはじめ、若い俳優さんとご一緒させていただいていますが、あまり年齢を感じない自分もいたりして(笑)。“自分は年上だから”“この年齢だから”と一歩引くことはないんだなと、今回の作品をきっかけに思ったりしています」
溺愛してるもの、教えて!
恵子が拓人に抱く……ほどじゃなくても、溺愛しているものを尋ねると、
「私、ソフトクリームが好きで。味はバニラですね。もう、本当はあったらあっただけ食べたいって思っています(笑)。1個食べた後で別のお店で見かけても、絶対種類が違うので。滑らかなのか、シャリシャリ感があるのか、試したくなるんです。でも、1日に何個も食べるわけにはいかないですよね(笑)」
取材・文/池谷百合子