人を見下す人ほど嫉妬深い
売れっ子になっても、過去の恨みつらみを隠さない姿が面白いという人もいるのでしょうが、私は山里さんって、実は自己評価が相当高いんだろうなという印象を持ちました。恵まれない人が恵まれた人に向ける感情を嫉妬だと思っている人は多いでしょうが、心理学では、嫉妬とは、自分より下とみなしている人にラッキーが起こったときに抱く感情とされています。
つまり、人を見下す癖のある人ほど、嫉妬深くなるわけです。加えて、自分は価値ある人間だ、その自分を粗略に扱うなんて許せないという気持ちが強すぎるために、10年以上前の過去の恨みを水に流すことができないのではないでしょうか。
それはさておき、芸人として売れるためには、芸を磨くだけではなく、強い人や組織に盛り立ててもらうことが必要と言えるでしょう。吉本興業の闇営業問題が明るみになった際、何人かの芸人が会社の在り方に声をあげ、『DayDay』の前の番組、『スッキリ!』のMC加藤浩次さんも、かなり強い口調で批判していました。
一方、山里さん自身はこの流れにのらず、2019年7月24日放送TBSラジオ『山里亮太の不毛な議論』内で、会社批判をする若手に対し、「きっとウチの会社って、“対・会社感”を出した人をちょっとメモったりするんじゃないかなっていう、几帳面さ、真面目なところがあると思ってる」と会社に報復される可能性を指摘しています。
会社員でも、正論であったとしても、自分が身を置く会社の批判を経営陣の前で堂々とすれば、居場所がなくなるのは当たり前。山里さんの考え方はまったくもって正しいのですが、この発言からは、世の中の動きにはまるで興味がなく、長いものに巻かれて、自分だけ大成できればそれでいいという保身の強さを感じさせます。
攻撃力と保身力を武器にスターへの階段を駆け上がった山里さんですが、人を傷つけないことを重視する今の時代、しかも、情報番組ですから、誰かを攻撃することは求められていません。山里さんの十八番、うらみつらみも朝にはふさわしくない話題でしょう。証拠もないのに強い組織や人に肩入れするような態度をとれば、ネット民の反感を買って炎上することは明らかです。
つまり、朝の情報番組では、山里さんの武器はことごとく使えないため、山里さんの良さが活かせないように見えるのです。明石家さんまさん風に言うと、朝の番組では「個性死んじゃう」のではないでしょうか。
しかしながら、朝の番組のMCというのは大きな仕事ですから、ぜひ成功させたいと思っていることでしょう。バラエテイ番組では“ゆがみ”をキープして笑いを取りつつ、情報番組ではいかにその“ゆがみ”を取り払って客観的に物事が見られるかが、いまの山里さんには求められていると思います。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」