渡辺謙がアカデミー助演男優賞候補となった『ラスト・サムライ』、『ピンクパンサー2』、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』など、超大作に出演する俳優の松崎悠希さん。
名匠・クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』では、嵐の二宮和也と同僚の兵隊という、重要な役柄をこなした。ハリウッドをはじめ世界各国の映画やテレビドラマに多数出演。幅広い演技のできるアジア人俳優として、地位を築いている。
高校卒業後、前単身渡米。ホームレスまで経験しながらも現在の地位にまで上り詰めた松崎さん。そのエピソードが、6月30日放映のバラエティー番組『幸せ!ボンビーガール』(日本テレビ系)の特番で「日本人ハリウッドスターの元ボンビーボーイ」として紹介され、話題となっている。
「僕の場合、放送された内容よりも、実際のほうが過酷だったんですけどね(笑い)」
そんな、ハリウッド映画級のスペクタクルなビンボー&アメリカンドリーム話を、改めて伺った。
子どものころに見た映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の、主演のマイケル・J・フォックスに憧れ、ハリウッドで活躍する俳優になりたいとの夢を抱いた松崎さん。その夢とともに、新聞配達で貯めたお金60万円と、英語辞書、量販店で買った甚平3着を抱えて、ツテもないのにニューヨークへ渡った。
「甚平を持って行ったのは、日本人ということをアピールすれば、なんとかなるかな、と思ったから。確かにその後、タイムズスクエアで日本の童謡を歌ってお金を稼ぐはめになった際、とても助かりましたね(笑い)」
なんと松崎さん、最初に泊まった格安ホテルのロッカーで、全財産の60万円を盗まれてしまうのだ。途方に暮れた彼は、ホテルの従業員に教えてもらったホームレス向けのシェルターに向かい、しばらくそこで暮らすことになる。
その後、さまざまなアルバイトを経験しながら、役者として芽が出るときを待っていた。
「住むところは相変わらずないので、バイト先の日本料理店の厨房で、イスを6脚並べて、その上に寝ていました。その後、やっと借りられたのが、車庫でした。地面に古本を敷いて寝床にし、身体を洗うのは外の水道。オーディションを受けたり、インディーズの舞台や映画には出られるようになってはいましたが、そんな生活が6年くらい続きましたね」
“住”がそんな感じだから、もちろん“衣”も“食”も足りてはいない。
「“衣装”しか持っていなかったですね(笑い)。オーディションの際には、その役柄に合った服装をしていかなくてはならないんです。新品を買うお金はないから、もちろんすべて古着。食事は、チャイナタウンで買う50個4ドル(約480円)の冷凍餃子か、1食14セント(約15円)のインスタント麺。車庫時代は、1ドル(約120円)15個入りのジャガイモを買い、それを1週間分として食べていました」