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 いよいよ放送がスタートする大河ドラマ『真田丸』。作品への期待が高まる中、主人公・信繁を演じる堺雅人に作品にかける意気込みを語ってもらった。

「“主役”ということをあまり考えずに、出演のオファーに即答しました。三谷作品を1年間、50本できるということは役者にとってすごく魅力的なことなので」

 自身、大河3作目での初主演。1年間、実在の人物を演じることの難しさはある?

「難しさというより、1年間通してできるということは役者にとって大きな喜びなんですよ。生活も安定しますから(笑い)。それに、たいていのことは時間が解決してくれると思いますし、ゆっくり時間をかけることができるのが、大河のいいところじゃないですか。その中で自分の変化を楽しみたい、というほうが強いです」

 それは役者としての変化? 役としての変化?

「両方ですね。第1話の中で、信繁の未来を予感させるシーンを撮影しました。大坂夏の陣で徳川の陣営に突撃していくラストシーンにつながるものですけど、それが1年演じることによって、どれだけ変わるのか。見ていただいた方に、1話で見た信繁の顔と最終話の顔では全然違うね、と言われたいですね」

 真田信繁を演じるにあたって、どんな信繁像をイメージしている?

「お兄ちゃんの信幸を大泉洋さんが演じられますが、その人の信繁を評した言葉に“物事柔和忍辱にして強からず”という言葉があります。柔和で感情を表沙汰にしない。ほんわかしていて、一見とらえどころがなくて、いつもニコニコしている。でも心に秘めた何かがあるというのが僕のいま持っているイメージです」

 そんな信繁と自分が似ていると思う部分は?

「最初に僕が真田幸村を演じると発表されたとき、“堺で大丈夫なのか?”という声があったみたいですね。

どうもゲームの影響らしいのですが、今、幸村のイメージは筋肉ムキムキで、裸に鎧を着て槍をブンブン振り回すというものらしくて。実像は知将というタイプで、どちらかといえば僕に近かったような気がします(笑い)」

 世間が持っているイメージとはずいぶん違うみたいだけど、戦国武将として高い人気を誇る幸村=信繁。その魅力は何だと思う?

「彼の人生で非常に面白いのは、49年の人生のうち、47年間は裏方というか2番手、3番手の立ち位置なんですよね。今風に言えば、事務方の人間なんです。日陰で裏方に徹しようとしていた人間が、誰か、もしくは“時”に背中を押されていちばんまばゆい場所に出てしまう。

武将としてあまり戦場に立つこともなく生きてきた人間が、最後の2年で恐ろしいほどの武者になるわけです。だから、ゲームで描かれているようなムキムキの、長い槍を片手で振り回すような怪力の人物というのもあながち間違いではなくて。

普通の、今で言うサラリーマンのような人間が、なぜ日の本一の強者と言われるようになったのか。その変わり身が面白いと思うし、その秘密を1年間かけて三谷さんは描くような気がするんです」