1月10日より公演中の舞台『DNA―SHARAKU』。出演者のミッツ・マングローブは、この作品で初めてミュージカル劇に挑戦している。
今回、ミッツが演じるのは2116年のTOKYOに生きる年齢不詳の優秀な遺伝子工学者。頭脳明晰という役柄は物事を俯瞰でとらえ、鋭い発言をする普段のミッツの姿に重なるが……。
「テレビでのイメージはそうなんでしょうね。だけどセリフを絵や音で覚えていることもあって、意味とか全然気にしないの。全体像も基本的に見ない。だから誤解もよくあって、今回の物語のテーマがCreationのほうの“創造”なんですけど、おとといまでImaginationの“想像”だと思っていた。このセリフは私の役はわかっている体で打ち明けていると思ったら、本当は知らなかったということも。……ひどいですね」
そう言って思わず苦笑する。イメージで言えば、女装家やオネエと呼ばれる人たちは華やかな舞台の世界が好きそうだけど、舞台鑑賞はする?
「全然見ないですね。宝塚歌劇団の大階段のセットとか、エンターテイメントの表現の仕方としてはすごいと思うんですけど、『ベルサイユのばら』は一生理解できないと思う。歴史モノやSFモノって、イチから背景を理解しなければならないから。『北の国から』や『渡る世間は鬼ばかり』のほうが、すんなり話に入り込めるから好きですね」
ホームドラマであれば自分と同じ日常が前提でそこからストーリーが展開されるが、非日常を描いた作品だと、設定の把握が必要に。
「幼稚園くらいのときにアニメの『ガンダム』を見たけど、物語の進行にも、見ている友達のテンションの盛り上がりにもついていけなくて。宇宙で戦っているシーンに対して“これは夜? 昼?”と聞いて、みんなにウザがられたの。ひとつ気になると、そこにギュッと集中しちゃうんです。自分の中で矛盾すると“なんでなんで?”となる」
その気持ちは、女装という選択にもつながっている。
「昔からずっと、自分が自分として生まれてきて、自分であることに納得がいってなかったんですよ。ほかの人はみんなキラキラとして自信があるのに、なんで自分はこれなのかと。
そんな思いは受け入れていく人がほとんどだろうけど、私はいやだったの。素の自分に興味を見いだせなかったんです。そこで都合よく別の者になれないかしらと考えたときに、ちょうど女装癖があったから、この体質を利用してしまえと」
舞台『DNA-SHARAKU』
人工知能が支配する未来のTOKYO。政府から謎の絵師・東洲斎写楽を抹消するために江戸時代に送り込まれた2人の青年(ナオト・インティライミ/小関裕太)が“創造する心”の大切さに気づき……。1月24日まで東京・新国立劇場で公演。1月28日~31日は大阪のシアターBRAVA!。2月6日と7日は福岡のキャナルシティ劇場で。
撮影/引地信彦