■共依存の後ろには不確かな社会がある
共依存の親子関係が生まれた背景には、複合的な原因があります。
「劇的に変わったのは東日本大震災以後。不確かな世の中で、家族の絆(きずな)はよくも悪くもより深まりました。また、女子高生がスマホにつながっている時間は1日平均7時間という調査結果があるのですが、これは仲がいいからではなく、お互いいつ悪口を言われるか、仲間はずれにされないか不安だから。その点、親は絶対に裏切らない存在なので、子は親を頼るしか拠(よ)り所がなくなっているんですね」
そのほかにも、就職難で子が巣立つことができず依存が高まったり、親自身も自立しておらず、子どもに“自分がいなければダメ”と伝え続けたり……。
「世界中の親が子の自立を望んでいるのに、日本の多くの親が学歴をつけることや、大企業への就職に夢中になってしまい、自立という課題をないがしろにしています。親はいつまでも子どもを守れないので、結局、不幸になるのは子どもです。また自立できない大人が増えたら、日本という国の競争力も衰えてしまいます」
いまは昔のような地域の目もないので、親が自分の異常さに気づく機会も少なくなりました。
「子どもと離れない親って、“毒親”と呼ばれる明らかによくない親よりも、実は悪影響かもしれません。何が起こっても“仲よしだからいいじゃない”という結論に、陥りやすいからです。ただ、危機感を持ってこの本を読んだ親御さんは、たとえその時点で共依存だとしても、自覚して改善してくださる方がほとんどです」
誰だって、親になるのは人生で初めてですから、完璧はありえません。
「私自身も子育てで失敗したことはあります。でも、大切なのは過ちを認め、子どもに謝り、正しい方向に修正すること。生きるのに難しい世の中ですが、互いを尊重し、親子それぞれが自立した関係が、ベストではないでしょうか」
もしあなたが、子どもについこと細かに指示してしまっていたり、べったり甘やかしているなら、一気にではなく徐々に距離を取っていくのがポイント、と尾木さん。子どもからの問いかけへの答えは“相談に乗る”にとどめ、決定は子どもにゆだねるのです。
子どもに反抗された覚えがない、子どもがいい子すぎる、子どもが生きがいだ──これらに当てはまるならば、本書がアナタを救う手助けになるかもしれません。
(取材・文/中尾巴)