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 働く人の心の健康を守るための『ストレスチェック制度』(改正労働安全衛生法)が昨年12月に法制化された。仕事の日は会社で1日の大半を過ごし、家にはほとんどいない夫たちは、家庭でもストレスを抱えている。

「外でバリバリ働いて疲れて帰ってきても、家だとリラックスできるから、また仕事を頑張れる」(28歳・自営業)

 そんな人もいるが、これは少数派。

「家に帰ってもどうせみんな寝ているしメシも冷たい。外で酒を飲んで憂さを晴らしている」(31歳・会社員)

「遅い帰宅だと怒られるし、早く帰れば邪険にされる。どこにいていいのかわからない」(49歳・自営業)

「何を言っても娘に無視され、にらまれる」(37歳・公務員)

 家庭をかえりみず仕事に励んだ結果、家族の中で居場所を失ってしまったのだ。

「家の中のことを把握していないので、ひとりでは何もできない。無力感で不安になるようです」(精神科医で『ゆうメンタルクリニック』代表のゆうきゆう医師)

 一家の稼ぎ頭のストレスを見抜くために、エピソードを参考に。

「早期退職をして、家にいることが多くなった私。妻は友人たちと出かけたり、カルチャースクールに通ったりと日々を謳歌していて、家を空けることも少なくありません。

 ある朝起きると、例によって妻はとっくに外出したあと。“自分の食事は自分で作って食べてくださいね”という置き手紙がありました。“まあ、そんな日もあるだろう”と、昼はインスタントラーメンでも煮て食べようと思っていました。

 いざ腹が減り、料理をしようとしたのですが、どこを探しても鍋が見つからないのです。困り果てて結局、コンビニで食事を買ってきたのですが、これは家のことを妻に任せきりにしていたせい。“自分ひとりでは何もできない”という情けなさを痛感しました……」(58歳・無職)

「息子が脚を骨折してしまい、松葉杖を使っても、歩くのが難しい時期がありました。雪国に暮らしていたので、登下校はしばらくの間、車で送迎をしてやらなければならず、妻と分担する予定でした。

 しかし、仕事で長期の出張が入ってしまい、息子の世話は妻に任せることに。申し訳ない気持ちはありましたが、“しかたない”と妻も言ってくれたので、理解してもらえている、と安心していました。

 息子のケガも治り、2人で一緒に買い物に出かけると、道行く奥さんたちからの視線が集中。ヒソヒソ声まで聞こえてくる。

 “夫が息子の世話を押しつけた”という妻のグチが出回ってしまい、ダメ夫のレッテルを貼られてしまったようです。外を出歩くのが苦痛。いつか名誉挽回できればよいのですが……」(36歳・会社員)