埼玉県立熊谷農業高校で教鞭をとる朝比奈永晋先生。毎年、秋の虫を皇室に献上する同校には、こんな絆も。
「蚕を飼育している関係で、1973年から皇后陛下の『ご養蚕』の手伝いも当校の卒業生が担当させていただいています。当時、香淳皇后から“熊谷農業高校の生徒は勤勉で素直”とのお言葉をいただき、毎年、泊まり込みで皇居の『紅葉山御養蚕所』でのお手伝いをしています。 美智子さまが皇后になられてからも、その関係は続いています。そんなご縁で、1978年からは昭和天皇と香淳皇后にも鈴虫を献上することにもなりました」
美智子さまが毎年、鈴虫の献上を楽しみにされているのは、美しい音色だけではない。
「献上する際は、水槽の側面に水で溶いた鹿沼土や砂による砂絵を描いています。皇太子ご夫妻が結婚された際は鶴の砂絵を、悠仁さまご誕生のときは桃太郎の絵を描き、今年の両陛下のものには鶴と亀を描きました」
毎年のお届けは、皇室の「節目」と重なることも多いようだ。傘寿を迎えた昨年秋、美智子さまは長寿を祝う鶴亀の砂絵を見ながら鈴虫の音色を聞き、熊谷農業高校との50年を越える「絆」を改めてお感じになったことだろう─。