いざというとき、全国のどこにいても安心して治療を受けられる……。そんな願いも、地域によっては叶えることが難しいようだ。
「日本の医療は“西高東低”が基本。東日本は人も施設の数も乏しく、西日本へ行くほど明らかに充実しています。医師や看護師の人数、医療施設の数もすべて同じ傾向にあります」(医学ジャーナリストの植田美津恵さん・以下同)
ランキングを見ると一目瞭然。人口10万人あたりの医師の数が多い都道府県は、1位の京都府を筆頭に徳島県、高知県、福岡県と西日本勢がズラリ。
「大学の数が多く、研究機関などの文化的資本が充実している地域は比較的、西日本に多い。だから人が集まりやすいのです」
東日本では唯一、東京が3位にランクインしているが、
「東京は特別です。首都で人口が極端に多いため、医療施設の数もそれなりに多い。ただ、救急搬送されたときに首都高速が混雑していたり、搬送先の病院でベッドが満床だったりすると、たらい回しにされるという別のリスクも抱えています」
医師の人手不足が目立つのは埼玉県、茨城県、千葉県。関東に集中している。
「救急医療や産科・小児科といった、24時間対応が迫られるところで特に人手が足りません」
看護師の数も、埼玉県はワースト1位。トップの高知県に比べて半数以下だ。
「医師であれば、東京の大学を出たあとに他地域の病院で働くこともありますが、看護師の場合はそれもない。学生を見ていると、上京して資格を取ったらそのまま就職、地元へ帰らないことが多いようです」
なぜこのような事態に陥ってしまったのか。
「これには歴史的な由来があります。明治政府を作ったのは、ほとんどが薩摩藩・長州藩の人たちでした。つまり、鹿児島県と山口県の人たちが中心となって、新しい国作りに邁進したわけです。自分たちの地域に近代的な施設を作ることから始めたので、いまだに病院も西高東低なのです。医師や看護師は、国家試験に合格後、一定期間は過疎地域や離島で働くよう義務づけなければ、地域格差は埋まらないでしょうね」
【お話を伺った人】
植田美津恵さん・・・医学博士、医学ジャーナリスト。首都医校教授。大学で教壇に立つほか各メディアで活躍。近著に『忍者ダイエット』(サイドランチ)