こうした雅子妃の安定したご体調から、4月の春の「園遊会」には12年ぶりにお出ましになるのではないかと期待が寄せられた。雅子妃も意欲的に体調を整えられていたという。だが「園遊会」は残念ながらご欠席となった。
それでも5月25日には、『ルーヴル美術展』に急きょお出ましになるなど、ご体調のよさを感じさせた。
そして、もうひとつ。今年は雅子妃が超えなくてはならない目標があった。それは、6月3日のフィリピン・アキノ大統領の国賓行事「宮中晩餐会」へのご出席だった。
昨年11月、雅子妃がオランダ国王夫妻歓迎の晩餐会にご出席されたのは実に11年ぶりのこと。今年もご出席できれば連続でこなされたことになる。
「宮中晩餐会は、雅子さまがご病気になったひとつの要因と言われていました。毎年ご出席できるようになることは、ご回復への大きな前進になると注目されていました」(東宮職)
雅子妃のご体調は、ご自分でも予測がつかないお疲れが出るという。こうしたご病気の性質から、ご出席までの判断は、予断を許さなかった。小町恭士東宮大夫も定例会見で、
「ご体調がよろしければ(宮中晩餐会に)おでましになる」
と、ぎりぎりまで具体的な発言は避けていた。
雅子妃のご出席が決まり、宮内記者に発表されたのは予定日の2日前のことだった。当日は雨天だったことから「宮中晩餐会」の前に行われる午前中の「歓迎式典」は宮殿の「春秋の間」間で行われたが、雅子妃はご欠席されて夜にパワーを温存された。
午後7時過ぎ。皇居に到着された雅子妃は薄いブルーに花柄模様のレースがあしらわれたドレス姿に少し緩やかなアップの髪型だった。出席者によれば、はじまりは昨年の晩餐会のご表情よりもいくぶんか穏やかに見えたという。
だが、晩餐会の終盤ではご体調が思わしくなかったことから1度退席をされて、別室で休まれた。1時間後ぐらいには戻られて、皇太子とご一緒にフィリピンのアキノ大統領にお別れの挨拶をなさったという。
このように雅子妃のご体調は、一進一退を繰り返されながら確かな快方に向かっていることがわかる。
「それは、例えば階段を1段1段と上って、踊り場で休むことでパワーを温存して、初めて次の階段を上ることができるようになるというイメージです」(精神科医)
雅子妃はこれからも前を向いて階段を上り続けられることだろう。そうしたお姿は、同じ病気の人だけではなく、自分とさまざまなことで闘っている人たちにも勇気を与えてくれるのではないだろうか。
この春から東宮ご一家の愛犬「由莉」が動物介在療法のアニマルセラピー犬として専門家から訓練を受け始めた。学習院女子中等科2年生になられた愛子さまは、学校から戻られると「頑張ったねー偉いねー」と言って何度も「由莉」の頭を撫でられるそうだ。東宮ご一家は、それぞれに前に進まれている。
友納尚子(とものう・なおこ) ●1961年生まれ。新聞記者、雑誌記者を経て2004年にフリージャーナリストになる。皇室問題について長期取材を続けており、その徹底した取材には定評がある。著書に『雅子妃 悲運と中傷の中で』(文春文庫)