■もはや集まって住むしかない
自治体は、人が住むことによって治安が保たれ、税収が見込め、人口が維持できると考え、居住者を募る。ひとつの試みとして根づいているのが、借り手がいない物件と借り手を結びつけようと各自治体が取り組む制度『空き家バンク』だ。長嶋さんが説明する。
「全国で400くらいあると思います。行政と連携してこの空き家を活用してくれれば補助金を出しますよ、家賃を安くしますよ、リフォーム費用を少し援助しますよ、と。所有者、不動産業者、行政それぞれが協力しないと、空き家問題はなかなかうまく解決しないですね」
効果的な対策を、今から打つことはできるのか。街づくりの視点から牧野さんは、
「人は全部、街の真ん中に住みましょう。これがいちばん単純です。タワーマンションを1000棟くらい建てるとかして、街をコンパクトにする。人口がどんどん減っていますから、もっと集まって住めばいいんです。居住エリアの線引きをやり直していかないと、もう間に合わないのです」
と提言する。人口密度が高い地域ができあがれば、自治体のサービスも集約できる。すでに先鞭をつけている自治体がある。
「富山市です。中心部だけに市電を走らせたり、行政サービスを充実させています。これを大都会でもやっていかないと。そこに住まないと不便という環境を、築いちゃうんですね」(牧野さん)
「消滅自治体」を認定した日本創成会議のレポートには、2030年に日本の自治体が半分に減るという衝撃的な内容も含まれている。もちろん2030年に1度に減るわけではなく、年々少しずつ、今のままでは立ちゆかなくなる自治体が増えていくという現実。すでに地方で始まっている“自治体崩壊”の足跡は、ゆっくりと、重く、都会にも忍び寄っている。
〈プロフィール〉
長嶋修さん●不動産コンサルタント。株式会社さくら事務所会長。空き家問題をはじめ業界・政策への提言も行う。メディア出演多数。
牧野知弘さん●不動産コンサルタント。オラガHSC株式会社代表。ホテルや不動産のアドバイスのほか、講演活動も行っている。