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 集団的自衛権が行使され、自衛隊が海外で軍事行動を展開すれば何が起こるのか? 日常的に空爆と隣り合わせで生活し、米軍が軍事行動を展開する紛争地で活動するNGO職員は、自衛隊員、NGO員、地元住民、そして日本国民の命の危機を強く憂慮している。

《遺書には、自衛隊だけは派遣しないでください、と書くしかない》

 これは昨年7月2日、特定NPO法人『日本国際ボランティアセンター(以下、JVC)』職員で、イスラエルとの紛争地であるパレスチナ自治区で活動する今野泰三さんがブログにしたためた一文だ。

 集団的自衛権を行使するために憲法解釈を変えた閣議決定への抗議の意が込められている。集団的自衛権行使への理由づけのひとつが、紛争に巻き込まれたNGO職員を自衛隊が救出する『駆けつけ警護』だ。

 だが今野さんは「本当に私は救出されるのか?」との疑念を抱く。ブログには、もし誘拐され自衛隊が救出に来た場合、起こりうるのは以下の3パターンと描かれている(要約)。

《1.戦闘に巻き込まれ日本人を救出せず去る(残された日本人の命の保証はな い)2.救出しようとした日本人と一緒に拘束される。3.泥沼の戦争になる。

 有事の際に突然やってくる外国軍に反発する民兵や住民を、“自衛”の名のもと、自衛隊が殺す可能性はおおいにある。中東で恨みを買う米軍との共同行動ならなおさらだ。ひとたび武器を交えれば、誰も制御できず双方殺し尽くす……。そうなると、私は交渉の余地なく殺されるでしょう》

 では、誘拐された場合の解決策はあるのか? これを問うと「ある」と今野さんは回答した。

「今までパレスチナのガザや西岸で外国人の誘拐事件はあったが、その多くが地元有力者の交渉で解決しました。ただし、救出できるかは、本人や本人が属する組織、自国政府のふだんからの現地での関係づくりという長期的側面に依存します。誘拐や拉致は、誰が犯人か、犯人の目的は何か、誰と交渉予定か、誰の影響下にあるかという情報しだいで、誰とどんな方法で接触・交渉すべきかが変わります。長期的側面がなければその判断もできません」

 今野さんが苦々しく思うのは、駆けつけ警護を、安倍首相が「時の政府の解釈次第で派兵する」と述べたことだ。その憤りをブログでこうぶつけた。

《時の政権が、“お、NGO職員が誘拐されたか。米国の要請もあるし、派兵を進めるか”と決めればそれで終わりです。誘拐されたら、助けて欲しいと願いながら、遺書には“自衛隊だけは派遣しないでください。パレスチナの人々も、日本の人々も、傷つけることはしないでください”と書くしかないと思っています》

 自衛隊派兵のためにNGOがダシにされている。日本が考えるべきは、武力による解決ではなく、日常の外交努力であるはずだ。