「亮くんのお父さんは自分を責めて、心の格闘をしています。体力的にもフラフラでドクターストップ寸前です。亮くんの命をかけた訴えを、犠牲者はボクだけでたくさんだという訴えを、親としてきっちり受け止めているんです。眠れないんでしょう。目の下が青くなり始めていますよ」

 と話すのは、いじめ撲滅活動に取り組むNPO法人『全国いじめ被害者の会』の大澤秀明代表(70)だ。

 岩手県矢巾町の公立中2年・村松亮くん(13)がいじめから逃れるため5日に自殺したとみられる問題で、事件当初は「いじめは知らなかった」と繰り返していた校長が13日に謝罪した。

 亮くんは、担任の女性教諭と交換する連絡ノートで、いじめや暴力を受けていることを再三訴えていた。しかし、担任教諭ははぐらかすような返事で黙殺。絶望して電車に飛び込んだとみられる。

 学校側の言い訳はひどい。担任が亮くんの訴えをひとりで抱え込んでしまい、いじめがあったことを情報共有できなかったというのだ。そんな言い訳は通用しない。

 ’11年に滋賀・大津市で起きた中2いじめ自殺などをきっかけに、’13年からいじめ防止対策推進法が施行。学校にいじめの早期発見のための情報共有や警察との連携を求めている。ところが、この学校は、生徒へのアンケートを校内行事を理由に先送りするなど、まるで当事者意識がなかった。

 しかし、亮くんの父親が13日、校長に面会すると態度は一変した。話し合いの中でどんなやりとりがあったのか? 面会に同席した前出の大澤代表が打ち明ける。

「学校に乗り込んだというと勇ましく聞こえるかもしれないが、亮くんのお父さんは控えめな方です。しゃべるのも苦手という。ただ、担任教諭と会わせてほしいと伝えたんです。ところが校長は最初、"会わせることはできない"というんです」

 憔悴しきった父親の代わりに大澤代表は怒った。大澤代表は’96年、当時中3だった四男・秀猛くんをいじめ自殺で亡くしている。事件をなかったことにしようとする学校やPTAの隠ぺい体質と闘い、亮くんの父親の気持ちは痛いほどよくわかる。

「校長先生、このお父さんの姿を見てくださいよ。ショックも癒えぬままマスコミ対応をこなしてやつれ果てて、何とも思いませんか! 先生がたの苦労がどれほどですか。亮くんは連絡ノートでいじめを訴えて"氏(死)んでいいですか"とか"消える"とはっきり書いているんです。それなのに担任は"テストのことが心配?"とか"研修たのしみましょう"と話をすり替えたんです。校長、あなたには監督責任があるんですよ!」

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自殺現場の線路わきを訪れた亮くんの母親

 校長は涙ぐみながら話を聞き、ようやく担任と会わせることを了承したという。面会の最後に校長は、「教えてほしい。これから私はどうすればいいでしょうか」と問いかけてきた。

 真相究明すること。加害生徒にとんでもないことをしたという自覚を持たせ、更生に導くこと。亮くんの墓前に謝罪させること─を約束したという。

 言葉だけでなく早急に実行してほしい。これ以上、亮くんを裏切ることは許されない。