戦争に巻き込まれるのではないかという国民の不安が増幅する中、政府与党は安保関連法案を今週中にも参院で強行採決する構え。衆院に続き、またも数の力で異論をねじふせようというのだから乱暴きわまりない。いっこうに聞く耳を持とうとしないリーダーに女性たちの怒りが爆発した。
自民党を政権から引きずりおろして廃案にできる与党を作っていきたい
東京・永田町の自民党本部前で9月10日、『安保関連法案に反対するママの会』のメンバー代表15人が集まった。
全国から寄せられた1万9489件の反対メッセージを自民党議員に手渡すためだ。雨が頬に吹きつけ、ベビーカーを濡らす。傘を片手に子どもを懸命にあやすママたちの姿を見ても、党本部職員は、建物内はおろか、敷地内に足を踏み入れることさえ許さなかった。同会発起人の西郷南海子さんは言う。
「安倍首相に面会を求めるメールやFAXをしても返事はありませんでした。ようやく党本部前でメッセージ集を受け取ってもらうアポをとりつけたんですが、雨でも中に入れてもらえないんだなと、ちょっと残念でした」
京都市在住。7歳、5歳、2歳の3児のママ。東京に向かう新幹線の車中では「お仕事する人たちが乗っている電車だから静かにしようね」と言い聞かせたが、ジッとしていてくれるはずもなかった。
「子ども連れで公共交通機関に乗るのはしんどい。グズれば“躾ができていない”と冷たい視線を浴びますから。うちのパパは仕事をしていますし預けられるところはありません。子どもたちのためにもっといい世の中をつくりたいと思って活動しています。間違っていることがあったら“間違っている”と言っていいんだという姿を見せたいんです」
ママたちは安保法案の国会審議の動画をスマホで見る。
「首相や大臣の答弁はぜんぜん答えになっていない。あるママが“安倍首相の答弁は1+1をダイコンと言っているようなものだ”と面白い表現をしていました。問いと答えが噛み合っていないということです。1+1は3というのであれば、なんで3になるのって議論できますけど、ダイコンって言われちゃったらポカーンとするしかない。そこまではぐらかされると、何か別の意図があるんじゃないかと、戦争で金儲けしようとしている人がいるんじゃないかと疑ってしまう」
ママの会の合言葉は「だれのこどもも、ころさせない」。7月26日の東京・渋谷デモには2000人が集まり、全国40か所で地域組織ができるほど共感の輪が広がった。
「会には、“うちの息子に自衛隊勧誘のハガキが来た!”というママが複数います。経済的に苦しかったら、生きるために戦地に行かざるをえなくなるかもしれない。安保法案を認めてしまったら、自分が生きるためにほかの人を殺しに行くという矛盾が起こる。何の利害関係がなくても弱い者同士が殺し合いをさせられることになります」
安倍首相が東京五輪招致で福島原発の現状について「汚染水はブロックしています」とスピーチしたときから、信用ならないと思い始めた。
「この人は目的を達成するためならどんなウソもつくんだなって。憲法を骨抜きにしようとしながら“憲法を守っています”と言うのはやめてほしい。自民党は新憲法草案を用意している。本当にやりたいことをはっきり言え! って思います。来年選挙がありますし、自民党を政権から引きずりおろして、廃案にできるような与党を作っていきたい。法案成立で終わりじゃありません」
ママは自分たちの手で世の中を変える覚悟を決めた。