乱暴なやり方を改めなかった政府与党への怒りは、来年夏の参院選でどう示されるか。
「主体的に動き始めた人はもう止まらないと思います。これは大学生の夏休みだけの活動ではないということを強調したいです。“(安保関連法案の)賛成議員を落選させよう”というのが合言葉のように使われています。法案が通るまでの運動とは違うものに今なりつつあるのではないかと思っています」
安保関連法案に反対する学生グループ『SEALDs』のメンバーで明治学院大学4年の奥田愛基さん(23)は、法案成立目前の記者会見でそう述べた。
第2幕が開けた。終幕は来夏の参院選だ。憲法学者や弁護士、文化人、著名人らによる違憲訴訟ラッシュが起こる。デモは終わらない。
「政治家は“落ちたらタダの人”と皮肉られるほどつぶしのきかない職業。改選議員が生活と政治生命をかけた選挙戦で、戦争法案を強行採決した“戦犯宰相”と並んでマイクを握る度胸があるか。ツーショットポスター撮影も、応援演説も、どれほど首相に要請があるか全く不透明だ」
と全国紙記者。
内閣支持率は低下した。しかし、政治評論家の有馬晴海氏は「安倍首相は来夏の衆参ダブル選挙を考えている」として次のように話す。
「自民党単独で衆院は3分の2の議席を持っている。しかし、参院は公明党の議席を合わせないと過半数にも足りない。そこでダブル選を仕掛け、衆院で300議席取る勢いを利用して、衆院も参院も自民党に入れてもらおうと考えている。どうしても衆参両院で憲法改正発議要件の3分の2をとりたいんですよ。解釈改憲の安保関連法はいずれ裁判所から『違憲』判決が出てアウトになります。党総裁の任期中、宿願の憲法改正のささやかなチャンスは、来年の参院選しかないんです」
どこまで憲法改正に前のめりなのだろう。安倍首相は支持率回復のため、安保問題から国民の目をそらすあらゆる政策を打ち出すはずという。支持率回復の具体的な見込みはあるか。ジャーナリストの大谷昭宏氏は「ない」と言い切る。
「支持率は下がる一方でしょう。例えばアベノミクスの破綻は明らかで、安倍さんは最近、アベノミクスの『ア』の字も言わなくなった。いまだに景気回復の実感がない。“第3の矢”の成長戦略も全く見えてきません。誰が見たって安保関連法は憲法違反。国民も政治に無関心ではなくなってきた。自民党議員は、地元選挙区で受けた批判と、国会でやってきたことがいかに乖離しているか肌で感じているはず。国会を閉会したあとも、これがボディーブローのように効いてくる」(前出の大谷氏)