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 東京・池袋近くのとある一軒家では、子どもたちの笑い声やドタバタと遊び回る音が響き渡る。

 ここは『要町あさやけ子ども食堂』。“子どもが1人で入れる食堂”として、第1・3水曜日限定でオープンしている。1食300円。毎回、多くの親子連れや子どもで大にぎわい。

  “子ども食堂”の動きが全国へと広がっている。近年、子どもの食問題が取りざたされる中でも特筆すべきは“子どもの貧困”。

 厚生労働省によると「子どもの相対的貧困率」は2012年には過去最悪の16.3パーセントにのぼり、これは6人に1人の割合。貧困の末に子どもが餓死する事件や、母親が娘を殺害するという痛ましい事件も起きている。

 そんな中、2012年ごろから子どもだけでも1人で立ち寄れる“子ども食堂”の取り組みがスタートした。家庭が貧しく十分に食事ができない子はもちろん、1人でごはんを食べていた子、不登校の子など多くの子どもが集まる。

 愛情たくさん、栄養たくさんのごはんを安心してお腹いっぱい食べられると話題。現在は首都圏だけでも30か所以上。関西、九州など全国でオープンしている。

『要町あさやけ子ども食堂』の山田和夫さん(68)の場合は、自宅でパン屋を営んでいた妻を6年前に亡くし、その自宅を開放して2013年3月に食堂を開いた。

「妻を亡くし、家ではひとりぼっち。1人の食事ってすごく寂しいんですよ。そんなときに大田区で“子ども食堂”を開いている人がいるって聞きつけたんです」

 さっそく食堂の見学に行ったという山田さん。

「“これ、いいじゃない!”“自分もやろう!”って衝撃を受けました。最初は僕も子どもの貧困問題について“そんなことって本当にあるの?”って、まさにそんな感じだったんです。でも、実際はたくさんいるんですよ」

 オープンしてもうすぐ3年。今やリピーターも多い。

「ここにはいろんな人が来ます。貧困に苦しむ方だけでなく、シングルマザーの母子や近所のおばちゃん、ただ楽しいから来る人もいれば、フラリと1人で立ち寄るサラリーマンも!“来ちゃった!”それでいいんです」

 なぜ来たか、どういう家庭環境なのか、どこでここを知ったかなど、山田さんは一切聞かない。

「みんな食べ終わっても全然帰らない!(笑い) でもそうやって月に数日でも、お母さんや子どもたちにとって“居場所”となってくれればうれしいです」

 食材の多くが、思いに賛同した全国の農家や個人の方から無料で提供されたもの。料理は近所の住民や大学生など大勢のボランティアが集まり、毎回みんなでわいわい作る。

 ボランティアだけでも14~15人ほど、さらにお客さんが40人ほど入り(多いときは80人来たことも)、またたく間に人でいっぱいになる。

「名前もそれぞれの事情も知らないけど、狭いから必然的にお互い譲り合ったりして仲よくなれるんです。みんなの笑顔が本当にうれしい。これからもここに来る人たちがくつろげる場であり続けてほしいです」

《子どもの貧困率とは》

 「貧困率」とは、世帯収入から国民ひとりひとりの所得を試算し、真ん中の人の所得(中央値)の半分(=貧困線)を下回る人の割合。「子どもの貧困率」とは、18歳未満で貧困線に届かない人の割合のこと。

 また、最近では沖縄の3世帯に1世帯が“貧困状態”にあるというニュースも世間をにぎわせた。平成26年1月には「子ども貧困対策法」が施行されている。

写真/齋藤周造