20160216mori

 イマドキの若者言葉がどんどん進化する一方、ブーム再燃の兆しをみせる奥ゆかしき大和ことば。新しい言葉が生まれる陰で、昔から使われてきた言葉が間違った意味で使われていたり、いつしか老いて、死語となっていたり……。

「流行語は最近の現象ではなく、いつの時代にもあったもの。言葉は、世の中の変化を映し出す鏡でもあり、そこから時代を読み解くことができます」

 こう語るのは新語ウォッチャーのもり・ひろしさん。

「例えば、昭和初期には“オフィスガール”“エレベーターガール”など、職業によって○○ガールと呼ばれましたが、この時期は女性の社会進出が進み、職業の選択肢が急増しました。“職業婦人”や“モダンガール”などの言葉も登場しました。

 また、男女雇用機会均等法が施行された'86年には、女性が“アッシー君”“メッシー君”“ミツグ君”なる複数の男性と交際するなど、男女のパワーバランスを象徴するような言葉も。ちなみに当時、ディスコに出入りしているのは女子大生でしたが、たまに紛れ込む女子高生のことを黒服が“コギャル”と言っていたことが発端となり、流行語に。

 '90年代中期以降にはコギャル文化が勃興し、“チョベリバ(超ベリーバッド)”“イケメン(イケてるメンズ)”などのギャル語が流行りました。あくまで私の主観ですが、いつの世もおもしろい俗語をつくるのは女性だと思います」

 2000年以降には男性同士の恋愛を扱ったBL(ボーイズラブ)作品を好む“腐女子”が登場。マンガやアニメが好きなオタク女子も社会に広く認知されるようになった。

 その後も山登りを楽しむ“山ガール”や、外に出るよりも家にいることを好む“家ガール”など女性のプライベートを表す言葉が登場したが、こうした言葉からは仕事や家事だけでなく趣味を楽しんでいる現代女性の姿が見えてくるという。

 ちなみに、かつて男性に求められたのは“3高(高学歴、高収入、高身長)”。現代の婚活市場で人気なのは低姿勢、低依存(家事分担)、低リスク(リストラされない)、低燃費(節約志向)の“4低”だ。共働きが当たり前となり、安定志向を求める女性の現状が浮き彫りとなっている。

「このように、俗語からは世相やそのときどきの経済状況を知ることもできます。例えば、バブル期には“就活”という略語はありませんでしたが、現代では就職活動の選考である“GD(グループディスカッション)”や、面接などで問われる“自己P(自己PR)”などの就活用語が当たり前のように使われています」

 “今後のご健闘をお祈り申し上げます”と書かれていることから、企業からの不採用通知を“お祈りメール”と呼称したり、内定が取れずに心を病む学生が多く“就活うつ”という言葉が生まれたことからも、現代の若者が抱える心理的負担の大きさがわかる。