イマドキの若者言葉がどんどん進化する一方、ブーム再燃の兆しをみせる奥ゆかしき大和ことば。新しい言葉が生まれる陰で、昔から使われてきた言葉が間違った意味で使われていたり、いつしか老いて、死語となっていたり……。
流行語はコミュニケーションツールの進化にも敏感だ。
「例えばポケベル全盛期には“シカベル(ポケベルのメッセージを無視)”、携帯電話が普及したころには“ワンコ(ワンコール)”という言葉がありました。いまはLINEでの利用に便利な“おね(お願いします)”“とりま(とりあえずまぁ)”“り(了解)”など、言葉を短縮することが目立ちます。
また、以前はテレビや雑誌などのメディアであったり、コギャルなどの特定な人々が流行りを広めていましたが、現在は“カミってる(神がかっている)”“ジワる(じわじわくる)”“DD(誰でも大好き)”という言葉からわかるように、インターネットから普及したものが圧倒的に多いことも特徴的」(新語ウォッチャーのもり・ひろしさん)
女子高生に話を聞くと、ツイッター上の友達でもなければ有名人でもないユーザーが使っていたユニークな言葉を、学校などで使うこともあるよう。また、書き言葉で使っていた“オワコン(終わったコンテンツ)”“メシウマ(他人の不幸で今日も飯がうまい)”を話し言葉として使用するパターンもあるとか。
つまり、流行語の広まる過程が以前の“メディア→世間”ではなく、“インターネット→世間→メディア”の順になっているのだ。
もりさんによると、掲示板サイト『2ちゃんねる』の利用者など一部のオタクだけでなく多くの人がインターネットで発言権を持ち、今まで流行の発信者とならなかった一般市民が主役となったことで、“ブラック企業”“セクハラ/モラハラ”“DV(ドメスティックバイオレンス)”など社会のタブーが表に出るようにもなったという。
流行語に着目することによって、人々がどういったことに困っているのか、何に不満を抱いているのかがわかることもあるというのだ。
ちなみに最近、女子高生の間では、首相とかけて“アベ過ぎる”という言葉が流行っているそうで、意味は「他人の話が聞けない、何か質問されてもごまかす」という意味だとか……。
「“リア充(リアルが充実している)”“意識高い系”など、皮肉めいた言葉も、メディアではなく一般の人発信だからこそ現れたもの。このように流行語は、本音の言葉であるからこそ世間の現実的な価値観を表していますし、インターネットによって以前に比べ、さまざまな場所での人々の思いを知ることができるようになりました。
年末に発表されるユーキャンの『新語・流行語大賞』はときとしてメディア的な制約を感じることもありますが、一般の人が発信した流行語・俗語は時代を映す鏡。社会の変化を知るためのツールとして必要なんです」(もりさん)