若い女性のファッション誌、新聞、週刊誌、ドラマの台詞や街中のポスターの文言に至るまでチェックを欠かさない飯間さん。身体がいくつあっても足りない気もするが、ネコの手でも借りているのだろうか。

「採集は活字メディアが中心。全媒体に目を通すことは人間業ではできません。だから今日は『週刊女性』かな、明日は『non-no』かなと、気まぐれで選ぶことが、結果的にいろんな活字媒体を網羅することにつながっていますね」

 言葉への柔軟な姿勢を重視し、その変遷を受け入れる“編む人”は、こんなことを楽しみにしているという。

「まだ観察対象ですが、“おこ(激おこ)”は、将来の版では採用されるんじゃないかと思っています。私がひそかに予想しているのは、そのうち“激怒”という言葉が古くなり、誰もが“普通は激おこじゃない?”という日が来ること(笑い)。すると、“激おこ”の欄に“もとは激怒と言った”と注釈が書かれるでしょうね」

 熱視線を送る候補語はほかにも!

「“ラスボス(ゲームなどで最後に登場する敵)”は、前回の編集会議でかなり話し合いましたが、不採用だった。でも、もう今は一般語化しています。企業間の交渉が行われるとき、“あの人がラスボスだから”という話が出るそうで、定着してきているんじゃないかと。昨年末の紅白でも小林幸子さんが“ラスボス”という愛称で紹介されましたね。これは昔の“真打ち”にかわる新語でしょうか」

 毎年、膨大な数の新語が生まれ、一方で死語となり消えいくものも。その変化を歓迎し、寄り添うのが辞書編纂者の仕事なのだ。

「どの時代にも必ず一定数、俗語が存在します。社会の変化、人々の意識の変化に応じて生まれる俗語は“若芽”が育っている証拠。言葉の世界にも新陳代謝が必要なんですよ」