野党は夏の参院選へ向けた一人区での統一候補擁立に動くが、難航している。立憲主義の危機を訴え、安倍政権打倒を掲げる野党のキーパーソン・民主党の福山哲郎(参議院議員)を直撃した。
――民主党は安保関連法廃止案を維新の党と共同で今国会に提出すると決定。あらためて反対の理由とは?
「まず憲法違反だということ。歴代の法制局長官、前の最高裁長官すら違憲と明言しています。なにより戦後60年にわたり政権を担ってきた自民党こそが、集団的自衛権の行使は違憲だと言ってきた。
それを一内閣の閣議決定だけで変更するのは、あまりに無理がある。法的安定性、統治秩序を壊すものであり、認めるわけにはいきません」
――廃止法案には『領域警備法案』などもセットで出されているが、憲法違反の法律の「対案は廃案」(民主・北澤俊美議員)では?
「安保関連法には廃止法案を提出しました。そこへ憲法の枠内で、日本の安全保障で領域・領海を守るために足りない部分を補う法律をさらに加えたということです。違憲の法律に対する対案ではありません」
――安保法廃止を求める市民は、進まない野党共闘に苛立ちを覚え始めている。
「なるべく透明性の高い形で進めていく必要がある。例えば公開討論会を開いて、政党も市民も、ママの会もSEALDsら学生もみんなで応援できる、かつ、勝てる可能性のある候補者を決める。
そうでなければ談合だ、野合だと言われて、間違いなく批判の対象になります。この人なら立憲主義を守り、安保法廃止のために戦ってくれそうだという候補者を市民が自由な議論の中で選び、応援できるような状況を作る。
誰に言われるでもなく国会前にたくさんの老若男女が集まった、あの勢いとエネルギーがなければ勝利は難しい」
――民主党内には解党して新党を作るべきとの声もあり、立ち位置がわかりにくい。
「いろいろな声があることでみなさんに誤解を持たれるのは、少し反省しなければならないと思っています。ただ、野党共闘で参院選の一人区を勝つという話と、政党の再編はまた別の話。野党共闘について党内で異論はありません」
――参院選の争点に安倍首相は憲法改正を掲げている。
「国民のなかに憲法改正の機運が高まっているとは思えません。一部の政治家だけが熱くなっている。そもそも閣議決定で憲法解釈を勝手に変えて、乱暴な形で安保法案を進めた内閣。
アベノミクスがうまくいかないことに焦点が当たらないよう、改憲という別の争点を出すことで国民の目をごまかそうとしています。
本来、争点とすべきは国民の生活や広がる格差、安保法であり、安倍政権の姿勢そのものです。安倍政権の登場は、政権交代したにもかかわらず国民の期待を裏切った民主党の責任も大きい。
とはいえ、このままでいいのか。政治家を動かすのは有権者。デモだけで終わらせては政治へのあきらめが広がってしまう。投票に行っていただいて自分の意思を表してほしい」