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 選挙権年齢が70年ぶりに改正され、20歳から18歳に引き下げられた。文部科学省は高校生の政治的活動を制限・禁止する通知(1969年)を出していたが、廃止した。同時に、高校生の政治参加の一部を容認する通知を出した。

 すでに“学外”で具体的に動いている高校生たちもいる。

 昨年夏、国会前や街頭で安保関連法の阻止のためのデモや集会が行われた。10代で作る『T-ns SOWL』(ティーンズソウル)もそのひとつだ。

 名称は、英語での「私たちは戦争法案に反対するために立ち上がった」の頭文字を取った。渋谷や原宿でデモをしたり、国会前で声をあげてきた。2月21日には東京、大阪、東北で一斉デモの開催を予定している。

 メンバーは無料通信アプリLINEで情報交換をしている。デモ班、SNS班、勉強会班などのグループがあり、全国で66人、関東では30人が参加する。

 高校2年生のあいねさん(16)=東京都=はもともと中東や戦争のことに興味を持っていたが、「1年生のとき、集団的自衛権の一部行使容認が話題になり、気がつけば閣議決定されていた」と危機感を持った。

 反対していた安保関連法が昨年、成立した。しかし自分たちが動いたことで成果を感じている。

「もっと簡単に通ると思っていた。デモによって採決が延びた。動くことで廃止も可能だと思う。やり続けるしかない」と前向きだ。

 あいねさんの周りでは政治の会話は日常になっているが、高校生の多くはそうなってはいない。だからこそ、大人たちには配慮をしてほしいという。

「子どもが政治に関する意見を持ったら大切にしてほしい。大人は逃げないで、自分の言葉で選挙の話をしてほしい」(あいねさん)

 メンバーのひとり、ちるちるさん(17)=千葉県=は昨年3月、高校生の集まりで政治や憲法について話をした。6月には、渋谷でのデモに参加した。

「消費税が8%に上がるとき、ノートをまとめ買いする友人がいた。政治の影響は日常にある。それに自衛官志望の同級生がいる。安保法制も遠くない」

 選挙年齢が下がったことには「(政治の)判断能力があるかは教育で変わると思うが、今の教育では難しい。自分も自信がないから、勉強会に参加している」と話す。

「(政治などの)意見を言い出したら、それ自体を尊重してほしいし、親も同時に学んでほしい」

 高校2年生のときにジュネーブの国連欧州本部で軍縮についてスピーチし、現在は産経新聞WEB版の『IRONNA』特別編集長も務めている、大学生の山本みずきさん(21)=東京都=は選挙権年齢引き下げについて、こう話す。

「政治家の人たちは高齢の方々を目の前にして選挙をしているので、引き下げによって若者の声が届けばいいが、それには投票に行くことが前提」と期待を示すものの、選挙が行われていない段階では「評価ができない」

 昨年12月、自民党本部で行われたイベント『若者と政党のガチンコ論争!』(自民党青年局、日本若者協議会主催)に参加した。

 その際、山本さんは「学校で高校生に各党が政策の違いを直接、主張できないか?」と質問した。自民党の政治家は「できる」と言っていたという。

 しかし、政治家が学校に出向き選挙の話をするのは難しいのが実情だろう。届け出政党だけでも11あり、時間が公平に取りにくい。

「ならばヒトラーの誕生や過去の独裁政権の成立過程を学ぶことで、自発的に興味を持つようになればいい。政治の知識がないのなら、国民ひとりひとりが勉強すべき」

 高校生のころから歴史や外交、安全保障に関心を持ち、大学生になって講演、執筆もしている山本さんは「若者たちはけっして豊かな生活を過ごせていない。生きている実感を得ていない」と、奨学金問題やブラックバイトの規制強化など若者にとっての政治課題をあげる。

 その一方で、「外交や安全保障が国の命運を左右してきた」として「自分の生活が苦しくても、一歩踏ん張って、国際社会の中で地位を高めることが大切」とも話していた。

 今夏の参院選は18、19歳の有権者が初めて投票する。投票率も気になるが、若者全般の政治的な関心を高められるか。そのために何をするかがカギとなる。

取材・文/渋井哲也(ジャーナリスト)