'11年の滋賀県大津市のいじめ自殺を契機に『いじめ防止対策推進法』ができた。青森県でも関連の条例が成立した。公布、施行は7月7日。美幸さんが発見されたのはその翌日だった。

 10日に火葬、13日に通夜、14日に葬儀が行われ、通夜には400人が参列した。

 夏休み前の7月22日、体育祭が行われた後、PTA役員会があり、学校側は「いじめはなかった」と説明した。両親には納得できなかった。

 美幸さんは日ごろ、「いじめ」という言葉こそ使わなかったものの、友人間のトラブルがあって、こんな言葉を佳苗さんに投げかけていた。

「お母さん、私の何が悪いの? どこか変? なんで笑われるの?」

 摂食障害で通院していたことで、日記がわりのメモノートをつけていた。

 そのタイトルは、

《摂食障害を直して ストレスないココロに。健康な身体に。素敵な女の子に。》

 だが、中を見ると1年生の12月には、

《あのクラスいやだな。てか、もー、人生がいやだな。ばいばいしたい》

 また、佳苗さんが発見した別のメモ(時期は不明)には、《私は生きていることがつらいです。どんなに考えても良い将来が見えません》

 そんな言葉が書かれていた。

 翌23日、PTA総会の朝、地元紙の取材に答えた両親の記事が掲載された。総会では「美幸の自殺はいじめが原因では」と声をあげた。

 遺族の主張を受けて、学校は「重大事態発生」と県教育長に報告。県教委は「県いじめ防止対策審議会」を立ち上げ、調査に入った。

 「審議会」では、LINEのやりとりなど「人間関係のトラブル」の中で、いじめと認定した事実があった。

 美幸さんは高校入学時に友達と『ちーむおべんと。』というLINEのグループを結成していた。捜索では美幸さんの携帯電話は発見されておらず、内容を知るには前出のメモや証言に頼らざるをえなかった。

 メモには摂食障害になった背景を自分なりにまとめており、グループ内のトラブルを思わせる内容も記されていた。

《距離をとり始めると逆にはぶかれるように。》《ムシ、つめたい声。》……。

 これらの記述は、LINEのグループのメンバーの生徒からも類似の内容の証言が得られ、美幸さんが心身の苦痛を感じていたと推察、いじめと判断された。《うざい》などの言葉も美幸さんがLINEのグループを抜けた後、ほかの生徒5人で悪口を言い合っていたことが確認できた。

《小さいいやがらせは続き、全て自分が悪いとせめる。》などの記述は誰がどんな嫌がらせをしたのかは確認できなかったが、いじめと認めた。

 「報告書」では、メモ以外の調査で明らかになったトラブルを含め7項目をいじめと位置づけた。だが、「顕著な悪質性は認めがたい」とされ、摂食障害は「もともと中学時よりその素地があった」と判断された。