長野県軽井沢町のスキーツアーバス転落事故は、事故原因がはっきりしないまま1か月半が経過した。教訓として意識したいのは、私たちがよく利用する公共交通機関の怖さ。
少しでも危険を回避するためには、どの席に座ればいいのか。何に気をつければいいのか。
「長野のツアーバスの事故原因は、1か月以上たっても明確になっていません。事故後にわかったのは、どうやら車両故障ではなく、運転手に起因する問題だった可能性が高いということ。そしてもうひとつ、バス会社の業務がずさんだったことです」
JAF(日本自動車連盟)の情報誌『JAF Mate』の鳥塚俊洋編集長はこう話す。
事故当時、ハンドルを握っていたのは非正規雇用の65歳の運転手だった。もともと短距離送迎用の小型マイクロバス専門で大型バスは苦手だったという。業界の規制緩和でいいかげんな業者が参入していた。乗客はそんなことは知らない。15人が犠牲になった。
私たちは日ごろ、さまざまな公共交通機関を利用する。バス、電車、タクシーに乗るとき、運転手に経歴を聞く人はまずいない。あらためて考えると、命を預けるのにずいぶんと無防備だ。あるいは運転がまともでも、事故に巻き込まれるリスクは常にある。
ならば、どの座席が安全で、どの座席が危険なのか? 事故のシチュエーションによって判断基準が変わることはわかっているが、それでも知識として知っておきたい。
まずはバスの場合。前出の鳥塚編集長は言う。
「いまのバスはガラスの面積がすごく大きい。スケルトン構造といって、車体土台のフレームは頑丈ですが、人が乗るところから上部は強固なフレームがなく、上から箱をかぶせただけのようなものです。特に観光バスは窓ガラスが割れると破片でケガをしやすいので、窓側よりも通路側の座席がいいでしょう」
ワイドビューの車窓を流れる景色を楽しみに、窓側の席を熱望する人も多いだろう。しかし、窓ガラスが破損する事故に遭った場合、通路側は“セーフ”でも、窓側は“アウト”となることがある。
座席のほかにも注意すべきポイントがある。最近ではグルメや温泉などさまざまなテーマの日帰りバスツアーが用意され、リーズナブルな価格設定で人気を集めている。
事業者向けに安全教育するNPO法人『交通事故予防センター』(水戸市)の久保田邦夫顧問は、「危ないバスツアーを見分ける方法がある」と指摘する。
「特に気をつけてほしいのは、中高年の女性客を意識して1日で観光スポットを何か所も回るツアーです。旅行会社が“うちはこんなに回ります”と立ち寄り先の数を競い合うような実態がある。時間に追われて運転手が疲れ切ってしまう。盛り込みすぎなんです。
1か所あたりの休憩時間が短くなるからまとめて仮眠もとれないし、交通渋滞などで遅れた帳尻合わせはスピードを出すしかなくなる。無理をしている運転手はかなりいると思いますよ」