街の声を聞くと、「マナーがよくない」「どうせすぐに来なくなるに決まっている」などという否定的な声も聞こえてくる、爆買い外国人旅行客。しかし、1兆5000億円のマーケットが生み出された現実は無視できない。

 日本への旅行ブームは、新たなビジネスも誕生させている。

 『インアゴーラ』株式会社は、中国の若い富裕層をターゲットに、日本企業が手軽に出店できるプラットフォーム『WONDERFULL』を昨年夏から開始。

 化粧品や美容品、食品を中心に2000アイテム以上取り扱っており、中国のユーザーは『豌豆公主(ワンドウ)』というスマホアプリで注文できる。

「中国国内で電子商取引に対する法的環境が緩和され、中国人の収入が増えて、さらに欲しいものへのこだわりが生まれたことから注目されています」(『インアゴーラ』株式会社マーケティングディレクターの唐瑩さん)

 肌ケア用品、お菓子、生活用品が中心で、独占販売の高額ドライヤーなども若い女性の人気を集めている。最近では、花畑牧場のお菓子も販売し始めた。

「意外だったのが、生理用品がとても売れること。中国にも同じメーカーのものがあるのに日本製を欲しがる。ひとりなら1年分に相当する注文があって驚いたんですが、同じ職場の女性10人でまとめ買いをしたようです。そうすれば、送料のコストがかかりません」(唐さん)

 このアプリの特徴は、情報量の多さにある。商品の内容や特徴・使い方を詳しく説明し、写真も豊富で動画も多用している。

「商品は日本語のパッケージで届くので、その際にもう1度アプリの購入履歴から中国語の説明を読むことができます。あと中国人は本当に日本製かどうかを心配するので、必ずバーコードの写真も掲載します。数字が“45”“49”から始まっていれば日本製という証です」(唐さん)

 旅行では、食事や体験を重視し、帰国後に気に入った日本製の日用品をこうしたアプリで継続して購入する。そんなライフスタイルが定着し始めているのだ。

 今後、爆買いトレンドはどうなっていくのだろうか。中国事情や“爆買い”に詳しいジャーナリストの中島恵さんはこう予想する。

「ニーズは二分化していくでしょう。現在訪日している中国人は、沿岸部の富裕層が中心で、まだ内陸の農村地帯の人々は来ていない。今後、彼らが来るようになれば、爆買いに走るのは間違いない。内陸と沿岸部では10年以上の格差があります。

 だから、この現象はしばらく続くということです。そして都市部の人たちはリピーターになり、より深く日本を体験していく。日本には、遊園地だけでなく、スキー、スケートなど中国では味わえないレジャーがたくさんある。日本人にとって何でもないことが、彼らにとっては驚きで新鮮なんです」