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'70年、家族で出かけた大阪万国博覧会での写真

 “自衛隊出身の俳優”という異色な経歴の今井雅之さん(享年54)が病魔に倒れてから1年。そんな今井さんの姉・陽子さんに話を聞いた。

 絶対的な権威を持っていて、一家の隊長のような存在だった父親は、今井家でテレビのチャンネル権も握っていたそうだ。

「必ず見ていたのはプロレスと戦争映画。雅之が格闘技とか少林寺拳法とか武道に興味を持つようになったのはプロレスを見ていたからでしょう。父は洋画が大好きで、雅之も英語はわからなくても字幕で楽しんでいました。それで映画に興味を持ち、“自分も何か演じられないだろうか”と思い始めたんでしょう。最初はブルース・リーのカッコよさに憧れていました」(陽子さん)

 家からバスで10分ほどのところに小さな映画館があり、徒歩で通って朝から晩まで同じ映画を繰り返し見ていた。

「当時の映画館は2本立てで、ブルース・リーの映画を見に行ったら『パピヨン』というスティーブ・マックイーンの映画も上映されていました。それでブルース・リーはどうでもよくなってしまい、マックイーンの演技のスゴさに取り憑かれてしまったみたいですね。

 “自分もスクリーンの中の人になりたい”という気持ちが徐々に強くなっていったようです。“もっと大きなスクリーンで映画を見たいんだ”と鈍行列車で6時間かけて大阪の映画館に行ったことも。

 電車がなくなって帰れなくなり、普通のホテルは高かったのでラブホテルに泊まったと聞きました。受付の人は家出かと疑ったそうですが、弟は“僕は将来役者になる。だから大阪の映画館のような大きいスクリーンで映画を見る必要がある”と説明して泊めてもらったそうです」(陽子さん)