ママがブログで「保育園落ちた日本死ね!!!」と訴えたことをきっかけに、全く解消しない待機児童問題への怒りが燃え上がっている。保育士不足は深刻。保育の現場と、この問題を国会で取り上げた民主党・山尾志桜里衆院議員を訪ねた。
保育室に入って驚いた。3~5歳の園児が、自分の背丈を超える11段の跳び箱をポンポン跳んでいた。男の子も女の子も怖がる様子はない。女児が駆け寄って来た。
「逆立ち歩きをするので見てくださいっ!」
軽々と逆立ちすると、身体をそらして上手にバランスをとり、テンポよく進む。
横浜市鶴見区にある認可保育園『北寺尾むつみ保育園』の長深田悟園長は言う。
「すごいでしょ。できない子はいないんです。保育園は子守りをしているだけじゃないとわかっていただけましたか。掛け算九九が9の段までできる子もいます。保育園に入れない子はかわいそうです」
保育士は近寄ってくる園児の言葉に耳を傾け、全体に気を配る。すごい集中力だ。
「女性の社会進出が進むほど保育園は足りなくなる。当然、保育士も必要です。でも、給料は安い。昔は専業主婦が多く、保育園に子どもを預ける母親が少なかった。主婦がパート感覚で保育士をやっていた側面もあると思う。しかし、時代は変わったんです」(長深田園長)
匿名のブログで「保育園落ちた日本死ね!!!」と切実な叫びが発せられた問題は広がりをみせている。国会で安倍首相は「匿名なので本当かどうか確かめようがない」と答弁し、与党からは心ないヤジが飛んだ。
すると国会前でママたちが「保育園落ちたの私だ」と静かにプラカードを掲げ、インターネットで保育士不足に絡めて「保育士辞めたの私だ」と投稿があった。待機児童問題が全く解決されていないことを如実に示している。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、昨年の保育士の平均賃金は月約21万9200円。国家資格が必要な職種なのに全産業平均より11万円以上安い。
「できれば月24万円にして手取り20万円台に乗せてあげたい。しかし、現状でギリギリなんです」(長深田園長)
保育料を決めるのは横浜市。各家庭の所得や子どもの数から算出される。同園は市から運営費をもらい、その約6割を人件費に使う。
「比率が6割5分を超えると運営は難しい。うちはまだマシなほう。3年前の開園時に保育士を集めるため、相場より2万円高く設定しましたから。そのときはアッという間に人材を確保できました」(長深田園長)
同園のスタッフは園長以下16人。今年1月、出産準備や夫の転勤などで保育士が4人辞めた。1人は子どもを産んだら戻ってくるが、残る3人分の穴を早く埋めたい。
「採用できたのは1人だけ。人材バンク10社に登録しても見つからない。人員に余裕があるので危機的状況にはありませんが、保育園同士で人材を奪い合う現実がある。1年中、リクルート活動する必要があります」(長深田園長)