鉄道会社も手をこまねいてはいない。阪急電鉄は、混雑率が高い3つの路線で女性専用車両を設定している。
「お客様からは女性専用車両の拡大要望が最も多く、警察も迷惑行為(痴漢等)の対策に有効な手段のひとつとして設定を求めていることを受け導入を行ってきました。迷惑行為の抑止には一定の効果があると考えています」(広報部)
JR東日本も女性専用車両の導入のほか、車内防犯カメラの設置、「痴漢撲滅キャンペーン」を実施するなど逃げ得を許さない態勢を敷いている。
「痴漢は許しがたい犯罪であると認識しており、当社では警察や他の鉄道会社と連携し、痴漢撲滅を呼びかけるポスターなどを通じて被害に遭われたお客様だけでなく、周囲の方への痴漢撲滅に向けたご協力を呼びかけたいと考えています」(広報部報道グループ)
周囲の乗客にも働きかけていく方針だ。痴漢抑止バッジをつけたからといって、すべての痴漢が萎縮するわけではない。かいくぐって行為に及ぶ確信犯的な連中は、後を絶たない。大渡副隊長に、痴漢を避ける注意点を聞いた。
「特に混雑する車両やドア付近に立つのを避けること。乗る電車を1、2本変えたり階段付近を避けるなどで、ドアの近くでなく車両の奥のほうに乗車できる場合もあります。また、スマホや化粧ばかりして無防備に見えるのを避け、時々でも顔を上げるように。
他の吊り革が空いているのに隣に来る、後ろにピタッとくっつく、ホームを往復している、ドアを移って乗り込んで来るなどの行為をしている人には注意が必要です」
被害に遭い声を出すのが難しければ、せめて相手の手元をたどって袖口や服の色、顔の特徴、持ち物などを確認し、警察に相談する。怪しい情報が積み重なれば、犯人像が固まることもあるという。
「卑劣な犯人を捕まえるためにはささいな情報でも不可欠。どうかご相談ください。安心してもらえるよう同行警乗や防犯指導を行ったり、怪しそうな人物をマークし検挙につなげられます。これから薄着になる時期ですから、警戒を」(大渡副隊長)
“泣き寝入りはいやだ”というたか子さんの思いが生み出した痴漢抑止バッジ。今年3月、東京・渋谷で行った無料配布イベントでは、幅広い世代の男女が好意的に受け取ってくれたという。
「バッジをすぐにつけてくれる人もいて、すごく励まされました。“少しは役に立てているのかな。やってよかったかな”と思えました。同級生も“頑張っているね”“つけている人見たよ”と言ってくれて」
たか子さんは、被害に遭っても黙殺されたのを思い出しつつ今の心境を率直に明かす。
「孤独じゃないとわかったことが、一番うれしい」
笑顔を見せてバッジを握りしめる手に力がこもった。
(※)起業家やクリエーターなどが、製品開発やアイデア実現などの目的のためにインターネットを通じて不特定多数に出資やプロジェクトへの協力などを募ること。起案者は、集まった資金を元手にプロジェクトを実行する
<「痴漢抑止バッジ」販売店及び協賛企業募集のお知らせ>
一般社団法人痴漢抑止活動センターでは『痴漢抑止バッジ』(税別380円)を販売する店舗及びプロジェクトの協力企業を募集中。詳しくは代表理事の松永弥生さんまで。