アルコール依存症やギャンブル依存症などより、まだ聞きなれない『共依存』。「やめられない」依存症とは違って、当たり前のようなことが人を苦しめることがあるという。長年にわたり家族の問題にかかわってきたベテランカウンセラーに話を聞いた。
「共依存というのは、お酒や買い物といった物や行為に依存する依存症とは違って、“人”に依存する関係のことを指します。人同士の関係性の問題でもあるので、そこが厄介な点でもあります」
と語るのは、さまざまな依存症について、日々カウンセリングを行っている臨床心理士の信田さよ子さん。
共依存とひと口にいっても、そこには母と娘、母と息子、夫婦、恋人などさまざまな依存関係がある。
「基本的に共依存とは、相手のお世話をすることで相手を弱者化させて支配をし、支配することの気持ちよさに依存している状態を指します」(信田さん、以下同)
例えば、足腰の弱っている人に、足腰を鍛えなさいと言うのではなく、
「その人がお出かけをするたびに車でお迎えをしていれば、さらに足腰が弱っていきますよね。相手のためによかれとやっているのに、実は相手のためになっていない。さらにお世話する側が、そこに喜びを感じている、それが共依存です」
この共依存という言葉は、もともとはアルコール依存症の患者の家族を指す言葉として、'70年代にアメリカで誕生したもの。アルコール依存症患者に面倒をみてしまう家族がいることで、その症状が悪化してしまう弊害から生まれた言葉だという。
「それが'80年代後半になって、日本でもアルコール依存症の家族はもちろん、例えば専業主婦が夫に依存している場合を指す言葉などとしても使われるようなりました。この言葉によって“お世話することが必ずしもいいことではない”という意識が日本でも生まれたのです」
それまでの日本では、お世話することに弊害があるという意識は、どの人間関係においても認識されていなかったため、
「お世話のしすぎは、その人にとっても相手にとってもよくないという認識が生まれたので、この言葉が入ってきた意味は大きかったですね」