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「『あさが来た』で五代友厚というキャラを演じているディーンさんを見ていて、“思い”がすごく伝わってきたんです」

 こう熱く語るのは『あさが来た』でチーフ演出を務め、『喧騒の街、静かな海』でも演出を手がけた西谷真一さん。朝ドラから続いてのディーン・フジオカの起用について聞いた。

「僕自身が、また一緒に仕事をしたいという気持ちがありまして、作品がまだ企画段階のときに出演をお願いしました。昨年11月に彼の朝ドラの収録が終わったのですが、ちょうど“五代さまブーム”が起こったくらいの時期ですね。翌12月にお会いして、オファーしました」

 そのとき、さまざまなところからオファー殺到していたが、ディーンはふたつ返事で「やります」と答えたという。チーフプロデューサーの谷口卓敬さんは、オファーしたタイミングについて、ある意味、奇跡だったと笑いながら、

「あのときをはずしていたら、ディーンさんでこのドラマを作ることは不可能だったと思います」

 ファンだけではなく、制作サイドのふたりもぞっこんになるディーンの魅力について聞いてみた。

「演技が大胆で豪快。不器用だけど、繊細なんです。見ているみなさんもわかると思いますが、性格のよさが画面から出ているんですよね。ああいった魅力を持った役者は、そうそういないです」(西谷さん)

 さらに、こんな話も。

「ディーンさんは、ご自身が取り組むすべてのことに対して本当にまじめなんです。仕事やファンに対する姿勢にしても、全部を大切にされています」(谷口さん)

 その“姿勢”は、今回の撮影中でも見ることができたという。

「撮影期間は、4月の頭から約2週間。大阪市内がメインで、撮影の最後は3日間ほどとある港町でロケをしました。撮影初日、大阪市内だったんですけど、現場にはすでにディーンさんのファンの方が500人くらい集まっていたんです(笑)。

 “なんでみなさん知っているんだろう”と、不思議だったんですけどね。港町のロケには1000人くらい来ていまして。普段は非常に閑静な町なんですけど(笑)。そのファンに対して、ディーンさんは手を振ったり、笑いかけたりと“神対応”していました」(谷口さん)

 そのかいあってか、本番時にはディーンの、「静かにお願いしますね」のひと言で、ファンたちはピタッと静かになったという。

「彼は来てくれたファンのために、と考えてやっているんですよ。優しいんでしょうね」(西谷さん)

 そして今回、彼が演じた水無月進というキャラについてこう話す。

「今まで彼が演じてきた二枚目キャラや、何か突出した部分があるものではありません。進は、どこにでもいる普通の青年です。あまりにフラットなキャラ設定なので、彼も最初はすごく悩んだようですね。

 ただ、同じようなキャラばかり演じていたのでは飽きられてしまう。今はいろいろな役を演じることが大事な時期だと思います」(西谷さん)

 ディーン本人に、大阪での撮影を振り返ってもらった。

「僕、大阪大好きなんです。好きという一部は“人”ですね。気持ちをまっすぐ、包み隠さずぶつけてくれるのがうれしくて。今回、たくさんの方々に協力していただいて成り立っていると思うので、大阪には感謝です」

ドラマ『喧騒の街、静かな海』

 大阪で、JKビジネスの少女たちに話しかける精神科医の海老沢淳(寺尾聰)。行き場のない子どもたちの受け皿になろうと、声かけのボランティアを続ける彼は“地回り先生”と呼ばれていた。そんな海老沢に「あなたの写真を撮らせてほしい」と近づいてきたカメラマン・水無月進(ディーン・フジオカ)。実は彼、海老沢と幼いころに別れた実の息子だった。素性を隠して近づいてきた彼の目的とは? 30年ぶりとなる父子の再会は、どんな結末をふたりにもたらすのか――。(7月18日 午後10時~11時13分 NHK総合にて放送)