「無理して帰ってこなくていいよ」

 74歳の現役美容家・渡辺雅子さんも3年前に卒婚をしたひとり。写真家の夫とはもともと自立した関係を築いていましたが、自分から別居婚を提案することはできなかったといいます。

「夫は自由な人ですが、それでも昭和の男。食事は女性が作って出してくれるものという固定観念があり、結婚当初は、私がどんなに仕事で遅くなっても、夕食が出てくるのを待っていました。もちろん、育児も私が担当で、仕事、家事、育児とフル回転で働いていました。家事や育児は女性の役目だと当たり前に考えられていた時代でした。

渡辺雅子さん
渡辺雅子さん
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 その後も、仕事はずっとしていて、都心の事務所から毎日、終電で自宅に帰るという生活を70歳過ぎまで続けていました。けれど、3年前に足を悪くして、歩くのがつらくなったときがあったのです。

 すると夫が“無理して自宅まで帰ってこなくていいよ。仕事をしているほうがあなたらしいし、これからも仕事を続けるなら事務所で暮らすほうがいいのでは”と、やっと言ってくれました。ようやく“お役御免”をいただけたわけです(笑)

 もともと事務所にはキッチンもベッドルームもあったので、こちらで自宅兼事務所として暮らすようになり、今では1か月に1回しか夫との自宅には戻りません」(渡辺さん)

 実際に卒婚をしてみると、夫にも変化があったそう。

「自分で無農薬野菜を買ってきて料理をするようになり、毎日、腕立て伏せをしたりして健康管理をしています。たまに家に帰ったときは、コーヒーを丁寧に淹れてくれてビックリ。意外ときっちり暮らしていて、今まで知らなかった夫の一面を見ることができました」(渡辺さん)

 今後、どちらかが病気になれば、また同居される可能性はあるのでしょうか?

「ありません。うちは自分の健康は自分で責任をとろうと話し合い、介護が必要になれば、専門の方にお任せすることになっています。病気のときに相手に頼ろうとは思っていません」(渡辺さん)