卒業後は、ドラマに映画にとコンスタントに出演。常に進化し続けている。
「立ち止まりたくない、いろんなことに興味を持って時代の空気を感じて進み続けたいとは思っています。“年相応”を意識せずに面白いことはどんどんやっちゃう。でも、常に壁にぶち当たってばかりでしたよ。経験値と想像だけではどうにもならない。
例えば、性同一性障害の役。私にはその方の痛みが完全にはわからない。本を読んだり、そういう方たちに会って実際に話を聞いたりして、なんとか気持ちをわかろうと準備はしました。だけど舞台の本番に入ったら最後は“神様降りてきて……”と祈るような気持ちで演じるしかありません」
それでも、ふっとその役の登場人物の気持ちを「こういうことかな」と感じることがある。
「そのとき、私の小さな脳みそが1ミリくらい、メリッと大きくなるんです。その瞬間、ものすごく大きな快感がある。これがあるから、役者はやめられないんです」
筒井さんは自己表現をする「女優」ではなく、完璧な「役者」なのだ。役になりきり、役の心を全身全霊で伝えようとする。
全身をさらす衝撃シーンに初挑戦
そんな彼女が今回挑んだのは、日活ロマンポルノを復活させる企画で、園子温監督がどうしても筒井さんにとオファーしてきた『アンチポルノ』だ。'71年のロマンポルノ第1作から今年で45年。それを記念して「現代のロマンポルノ」として新たに5作品作ったうちの1本である。この映画の中で、筒井さんは一糸まとわぬ姿をさらしている。
「私でいいんでしょうか、というのは何度も確認してもらいました(笑)。監督もチャレンジャーですよね。
社会的なリスクも少し考えました。“脱ぐ”ことだけがひとり歩きしてしまう怖さですね。家族の顔も浮かびました」
両親はすでに他界しているため、まず姉に話したという。
「姉はとても堅い人ですが、“人間は細胞分裂で生まれてくるわけじゃないから自然なことでしょう。それを避けて通ったら本当のことは描けないんじゃない?”と言ってくれました。ホッとしましたね」