「国家に尽くす家族でなければならない!?」
家族条項にも問題がある。
「自民党の主張や政策をみると、家族条項の導入で、保育や介護などを家族に負担させる目的があります。2004年に同党が発表した憲法改正の論点整理では、家族内の男女平等が問題だから改憲すべきとすら主張していました」
と飯島教授は指摘する。女性は男性よりも家事・育児・介護に汗をかけということらしい。解決にはほど遠い待機児童問題や介護問題を国民に丸投げしたいのかもしれないが、時代錯誤も甚だしい。
前出の大谷氏は「自民党改憲草案では、家族の幸せというよりも、国家に尽くす家族でなければならないという国家主義的な考え方が垣間見える」として次のように語る。
「米国はトランプ大統領を選びました。英国は国民投票でEU離脱を決めました。私たちも選挙で、改憲に積極的な勢力が3分の2以上を占めることを選んだんです。ただし、そこまでは許しましたが、まだ改憲を決めたわけではありません。私たちの選択が間違っていなかったか、しっかりと検証したい」(大谷氏)
これから衆参両院の憲法審査会で改憲項目が絞り込まれていくとみられる。数にモノをいわせて改憲発議にこぎつけても、最後は国民投票で過半数の賛成がなければ憲法は改正できない。
「憲法の旧仮名遣いを現代語にする改正が必要との主張があります。しかし、多くの中学では社会の授業で憲法前文を暗記させるなどして意味を教えていますし、わかりやすく説明する書籍も多く出版されています。むしろ、そのどさくさに紛れて憲法の意味を変える改正がなされるのが心配なんです」と飯島教授。
ところで安倍首相は1月24日の代表質問で、民進党の蓮舫代表の質問に「訂正でんでんというご指摘はまったくあたりません」と答弁。「云々」を「伝々」と読み間違えたとみられる。日本語に「伝々」という言葉はない。
麻生財務相も首相在任中、「未曾有=みぞうゆう」「頻繁=はんざつ」「踏襲=ふしゅう」「低迷=ていまい」と誤読を連発して笑われた。安倍首相には“でんでん首相”と不名誉な呼び名もついただけに、言葉遣いを理由に改憲をゴリ押しするのはさすがに難しくなったのではないか。その動向に目を光らせたい。