また、今回の法案では、共謀罪の対象を“組織犯罪集団”としている。
「いろんな市民運動で団体を作っていますが、普通は犯罪を目的に集まっているわけじゃない。例えば10人ぐらいの団体で、国会の壁に政府への抗議メッセージを書こうと半分以上が話し合ったとします。すると団体の共同目的が変わったと認定され、組織的犯罪集団になるのです」
共謀や準備行為の認定をするのも、組織犯罪集団と決めるのもすべて警察だ。
「政府は共謀罪について一般人は対象外と言っていますが、一般人かどうかを決めるのは警察。警察から見て一般人ではないと思ったら逮捕されてしまう。
そこでは政府に対立する人かどうかが判断基準です。共謀罪で逮捕して拘留されたという事実が残れば、運動をつぶせます。その手段を警察は持ちたいんです」
市民が声を上げにくくなる社会、それが共謀罪の真の狙い、と山下弁護士。その目的は「戦争ができる国」の体制強化だと警告する。
「特定秘密保護法、安保法制ときて、南スーダンPKOで自衛隊が派遣されています。まさに今年や来年、集団的自衛権でアメリカのために自衛隊を海外派遣する事態になるかもしれない。そのときに死者が出る可能性がある。それを想定して共謀罪を作っておきたい。戦争反対という声をつぶすための、戦時体制へ向けた取り組みの一環なんです」
毎日新聞の世論調査では共謀罪創設に53%が「賛成」。テロ対策になると考える人は多い。
「アメリカの9・11やフランスのテロは共謀罪があっても防げませんでした。それに日本は『テロの未然防止に関する行動計画』を定めて、すでに対策をとっています。そもそもパレルモ条約は基本的にマフィア対策で、テロは対象外。共謀罪がなくても条約を批准できるように、国連はわざわざガイドラインを設けて、やり方まで書いています」
それでも共謀罪は必要だろうか?
「特定秘密保護法、盗聴法と相まって国民が監視の対象になり、恣意的な逮捕や冤罪が続出する社会になってしまう。共謀罪の問題は誰にとっても無関係ではないのです」