2月7日に《今は加療に専念し、世界選手権でしっかりとした演技が出来るよう体調を整えたいと思います》とコメントを発表したのは、フィギュアスケート選手の宮原知子。
昨年12月の日本選手権で3年連続の1位に輝いた日本スケート界の女王だ。彼女が左股関節の疲労骨折と診断されたのは、1月半ばのこと。
「全治4か月の診断を受けたそうです。今月16日から韓国で行われる『四大陸選手権』と23日からフィギュア競技が開始予定の『2017冬季アジア札幌大会』を欠場することを発表しました。ふだんから“努力の人”と評される彼女ですが、このような過密日程にも応じるようなまじめな性格が仇となり、ケガにつながってしまったのだと思います」(スポーツ紙記者)
そもそも、疲労骨折はなぜ起こったのか─。
「回転軸にしたり、ジャンプの着地にしたり、アクセルジャンプの振り上げにするのは右足が多いため、右股関節の故障は多い。
でも、宮原さんのように左股関節の故障は珍しい。彼女はコンビネーションジャンプで、2つ目にトゥループを跳ぶことが多いため、左足をつく際の衝撃が原因ではないかと思います」
と語るのは五輪に2大会連続で出場し現在はプロの振付師として活躍する村主章枝さん。彼女も選手時代に股関節の痛みに悩まされたという。
「酷使しすぎで関節唇が出てしまい、歩くだけでかなりの痛みを伴いました。トリノ五輪の選考前だったので、試合を欠場して2か月ほど休養しましたね。とはいえ本調子には戻らず、全日本選手権でも痛みを引きずっていました」(村主さん)
股関節は体重を支え、立ったり歩いたりといった動作に大きく関わる重要な部位。日常生活でも使わずにすむ日はないだろう。さらに、
「一般的な骨折はポキッと骨が折れるため、断面がキレイでくっつきやすい。しかし彼女のような疲労骨折は、骨がはがれたような凹凸のある断面になるため、くっつきにくいんです。現状はわかりませんが、簡単には治りにくいと思います」(村主さん)
昨年、羽生結弦も左足リスフラン関節じん帯を損傷し、全治2か月と診断され、一時は休養説も持ち上がった。宮原も具合によっては長期療養ができればいいのだが、世界選手権欠場は、日本にとって大きな痛手。実は、3月29日〜4月2日に行われる世界選手権大会が、フィギュア界で大きな意味を持つからだ。
「平昌五輪の出場枠30のうち、24枠の割り振りがこの大会で決まります。3人出場する日本の場合は、各国上位2名の成績を足して13位以内なら3枠、14〜28位なら2枠、29位以下なら1枠になります」(前出・スポーツ紙記者)
日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュア委員長も「世界選手権のためにはここで治療したほうがいい。ちょっと心配ですけど早く治して戻ってきてほしい」とコメント。
「1月27日時点では、宮原さんが世界ランキング2位。ほかの日本勢は、同ランキング22位の樋口新葉選手と、42位の三原選手。是が非でも3枠を獲得したい日本としては、宮原選手に万全を期してもらうため、2大会を欠場させることにしたのでしょう」(スケート連盟関係者)
しかし、前出の村主さんは「個人的には、無理して出場しないでほしい」と語る。
「このような試合の場合、世界選手権出場の可否は、本人の意思だけでは決定できないと思います。コーチや連盟も含めた話し合いがもたれると思います。枠の獲得も大事ですが、無理をして彼女のケガが悪化しては困りますし、宮原さん自身が五輪の出場権を逃しては元も子もないので」
まずはケガをしっかり治して、リンクへ戻ってきてほしいものだ。