包括契約について、JASRACは、
「私どもも楽曲ごとに、何回演奏されたかを申告するのが基本と考えます。しかし、それが現実的にできるかというと、大きな負担となるので難しい。
音楽教室につきましては1曲いくらという形も用意しています。カラオケ店には同様にどちらかの契約方法を選んでいただいています。包括契約のほうが定期券のように1曲あたりの金額は割安になることが多いです」(前出・JASRAC広報部)
著作権トラブルに巻き込まれる芸能人
日本伝統の『雅楽』の演奏者の岩佐堅志さんもJASRACの徴収方法に疑問を抱いている1人。突然、ある公演における著作権料の支払いを求められたという。
「私が演奏する曲は、今から1000年以上前のもので、著作権の切れたものだけです。それなのに使用した曲を申告しろと言われたのです。担当者は、雅楽を“がらく”と呼ぶような方でした」
芸能人が著作権トラブルに巻き込まれることも少なくない。
「'06年に森進一さんは『おふくろさん』に勝手に歌詞を付け加えたとして、作詞者である川内康範さんと著作権の侵害について騒動に。'07年にJASRACによって“改変版の歌唱・利用許諾はできない”とされ、森さんは『おふくろさん』を歌えなくなりましたが、川内さんが亡くなった'08年に川内さんの長男と和解。オリジナル曲のみを歌うことを条件に歌唱が解禁されました」(前出・レコード会社社員)
'15年には演歌歌手の平浩二がMr.Childrenの歌詞をほぼ丸パクリして話題に。'06年には槇原敬之が漫画家の松本零士の『銀河鉄道999』のセリフを楽曲で盗作したとして、裁判ざたに。また問題は政界でも……。
「'13年に大ヒットしたNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』のテーマ曲を東京都議選の候補者が無断で使用。著作権の侵害だと、作曲者からの指摘で使用を取りやめました」(政治部記者)
宇多田が望むように個人の裁量で音楽教室での楽曲使用に関する著作権料を“無料”にすることはできるのか。
「音楽教室というひとつの分野だけ、特別扱いするような形で著作権料を無料にすることはできません」(前出・JASRAC広報部)
人生を豊かにするはずの音楽が争いのもとになるとは。JASRACもアーティストも音楽教室事業者そして私たちも納得して音楽を楽しめるのは日は来るのだろうか。