子どものために安全な水を求め、月2万円以上の出費に
7歳と12歳の子どもをもつ高橋玲子さん(30代=仮名)は原発事故直後、科学者たちの言葉が信じられず、自分から積極的に情報を収集し、ここは危ないと県外避難を考えた。だが、かなわなかった。
「“二重生活は嫌だ”と反対する夫ともめたんです。私は子ども中心で考えたのに結局、押し切られました」
ここに住まねばならない。では、私に何ができるの? 高橋さんは、やれることは何でもやった。子どもを外で遊ばせるときは線量計で放射線を測定した。当時は毎時1マイクロシーベルトと、通常値の約20倍はザラ。結局、家の中で遊ばせることが多かった。
水は買った。月2万円以上の出費となった。いのちの水を知ったのは4、5年前。すぐに連絡をして以来、毎月通っている。
配布にはABCの3コースがある。Aは妊婦と18歳までの児童に水を。Bはその保護者と、仮設借り上げ世帯、ひとり親や孤児世帯などの社会的弱者にジュースなどの飲料。Cは保護者世帯に冷凍食品など。
取材当日のAコースは水4ケース(2リットルが24本)。2人の幼児がいる高橋さんは、Aコースを2つ受けた。
いのちの水には自由記入帳が置かれているが、そこから、母親たちの率直な思いを紹介したい。
《白河市から初めて来ました。震災後ずぅーっと水を買い続け、食品にも気を配り、買うこともだんだんままならず、思い切っていのちの水さんに電話で詳細を聞き、県南の者でも利用できると知り感動してしまいました。心からお礼申し上げます》(7歳、4歳の母)
《原発事故でこんなに水に悩まされるとは思ってもいませんでした。これからの子どもたちを思うと胸が痛みます》(5歳、3歳の母で妊婦)
国の基準は、水道水のセシウム濃度を1kgあたり10ベクレルと定めている。そして、郡山市の公表データでは市の上水道はすべてセシウム非検出(1kg1ベクレル未満)だ。
それでも母親たちは不安を払拭できない。坪井さんは、その不安に寄り添うことが大切だと強調する。
「お母さんたちが“不安”と思う。もうそれだけで被害です。お母さんたちの不安は本能的なもの。それを軽視するのが科学者や政府。私は寄り添い続けます」