いつでも寄り添いたいから、「私は1年中サンタであり続ける」
坪井さんは、物資配布の日は1日中、冬でも夏でも、サンタクロースの格好で臨んでいる。無償の愛を注ぎ続ける象徴であるからだ。
坪井さんは’14年12月、「私はサンタになる」と決めた。当時の気持ちをホームページに書いている。
《わだば(私は)、サンタクロースになる。歴史は、時として理不尽な津波のように私達の人生を襲ってくる。しかし、その理不尽な時間のなかに子どもたちを取り残すことは、私はけっしてしない》
1年中、見捨てない。実際、いのちの水では、さまざまな活動を展開している。
毎月第3木曜日には母親たちがざっくばらんに悩みなどを話し合う「母親サロン座談会」を開催。そして生活に欠かせない衣食住のサポート。まず「衣」は、毎月のように、全国から送られた古着などを500円で30リットルの袋に詰め放題のフリーマーケットを開催(売り上げはシリア難民支援などに活用)。「食」は今後、企業からの寄付を増やすことを目指し、「住」で目指すのは保養施設の設置だ。坪井さんが言う。
「水の配布も保養制度も、いちNPOがやるには限りがある。これは社会システムとして、国や自治体が構築すべき課題。この1000年に1度の未曾有の経験をここで生かし、誰もが安心して生きられる社会制度の構築に今動くべきです。私の活動はそのためです」
前出の高橋さんは涙ながらにこう語った。
「今まで普通と思っていたことが、なんて貴重だったんでしょう。子どもが自転車の練習をする、すべり台をすべる、ドングリを拾う。福島では、それにいちいち不安がつきまといます。でも、私はやるべきことをやるだけ。すべては、原発に頼らない社会を構築することにあると思っています」
高橋さんも山根さんも含め、いのちの水の活動を積極的に手伝う母親も現れている。子どもたちは自分たちで守る。最後の砦はそこしかない。
※3月中旬からシリア難民支援のための輸送代を募集予定。
詳細はhttps://readyfor.jp/
〈取材・文/樫田秀樹〉
ジャーナリスト。’89年より執筆活動を開始。国内外の社会問題についての取材を精力的に続けている。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)が第58回日本ジャーナリスト会議賞を受賞