次々に浮かぶ初体験企画案とは
羽田さんは今回の連載での体験が新しい小説の「種」になるかもしれないと語り、次々に面白そうな初体験企画案が浮かんできます。
「ホテルへ朝食だけ食べに行くとか、はとバスに乗ったりするのもいいですね。あと、僕は中学時代から御茶ノ水近辺になじみがあるんですけど、神田川を源流からゴムボートで下って、御茶ノ水を下から見上げてみたいですね。さんざん川の上からは見たことはあるけど、下から見ることで、中学時代からなじみのある場所が全然違う景色で見られるのかなと」
また中学時代から自転車で移動してキャンプをしていた羽田さんには、ひそかに憧れていることがあるのだとか。
「おしゃれな格好でアウトドアをやったことがないんですよ。友達とオートキャンプへ行くときも、ユニクロのダサい格好で行くというのがポリシーだったりして、おしゃれな人を見ても『カッコつけてんじゃねーよ、道具ばっかそろえやがって!』と思ったり。でも“カッコつけキャンプ”をやってみると、それはそれで楽しいんだろうなって(笑)。
アウトドアだと、あとはマウンテンバイクで山の上から下っていく“ダウンヒル”にも興味ありますね。富士山でもできるみたいなので、1度やってみたいです。あとはアートとかもいいかもしれないですね。描いてみたり、絵を買ってみるのもありかもしれない」
ずっとやってみたかったけど、きっかけがなかったこと、バカにしていたけれど実は気になっていたこと、興味もなかったけれど、ふとしたきっかけで心から離れなくなったことなど、初体験への入り口はさまざま。羽田さんの初体験エッセイが、読者のみなさんにとっても新たな体験をするきっかけになるかも。
「僕は31歳なんですけど、何かの世界を極めるにはまだ若いと思うんです。だけど思い出の品を処分するときにはそれなりに考えることもある年齡です。そんな人間が、人生でやるべきこと、やれないこと、やりたいけどできないことを分別して考えるようになって、後悔しないために、いろいろやっていく変な姿を楽しんでもらえたらな、と思います」
<プロフィール>
はだ・けいすけ 作家。1985年、東京都生まれ。2003年、17歳のときに『黒冷水』で第40回文藝賞を受賞しデビュー。15年『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に『不思議の国の男子』『ミート・ザ・ビート』『御不浄バトル』『「ワタクシハ」』『メタモルフォシス』『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』など。3月に新刊『成功者K』を上梓。