「出産の翌年、甲状腺機能亢進症を発症したんです。そのせいか、思うように家事ができずアルコールを飲む機会が増えました。あるとき飲みすぎだと思い、ウイスキーのボトルを隠したんです。そうしたら妻が怒りだして……。私に文句を言い、なじるんです。家事ができないのも、お前の出来が悪いからだ、と。そんな日常の繰り返しでした」
エンジニアの山田さんは、大学時代に知り合った妻と、'03年に結婚。'06年には今年で11歳になる長女が誕生したが、その前後から始まっていた妻の異変は、アルコール摂取によって増幅した。
精神的なDVが始まると同時に、妻が壊れ始めた。
外出先で飲んで警察に保護される、家の中で暴れて包丁を持ち出す、子どもを連れて勝手に実家に帰り3か月以上も帰ってこない、医師にアルコール依存症の外来を紹介されても酒量は一向に減らなかった。そして'13年3月、
「会社に保育園から、妻が迎えに来ないという連絡があったんです。家に帰ると妻はリビングに倒れていて、大量に薬を飲んだ跡がありました。《お前の行動言動が私を追い込んだ! 自分のバカさかげんを反省しろ! 一生後悔しろ!!》という殴り書きの遺書が残されていて……」
山田さんが救急車を呼び一命をとりとめた。当初、妻は“お前が悪いんだ”と語っていたが、もう娘には会わせないと山田さんの母親が激怒。もう娘に会えないかもしれないと思った妻は、反省を口にするようになった。
《私はどうかしていました。今回も取り返しのつかないことをしてしまい、その事で皆様に大変迷惑をかけてしまったことを心の底から反省しています》《娘を大切にし、娘にパパの大切さを教えます。暴言を吐くようなことはしません》と反省文まで書いた。
「子どものこともあるし、今後は改善するのではないかと希望を持ちやり直すことに決めました。でも、この選択が間違いだったかもしれません」
と山田さんは弱々しく語った。
反省も長くは続かず娘が小学校に入学すると、再び飲酒。暴言、暴力、家出、知らない男と食事、朝帰り、出会い系サイトからのお金の振り込みや、“寝ている間に刺してやるからな”という脅迫も。400万円ほどあったはずの貯金も、知らぬ間に妻が3年間で使い切ってしまった。
「我慢するしかない」と思った山田さんは、争いを避けるため仕事から帰ると自室にこもるようになった。ドアや壁を容赦なく叩き罵声を浴びせる妻。顔を合わせればケンカし、もみ合いになったことも。
「寝室で動画を見ていたんです。するとその音がうるさいと、妻が怒りだしました。何度も何度もドアを叩いて叫ぶんです。もう我慢ができず、近くにあった手持ちのマッサージ器で威嚇するつもりが抑えきれずに妻を殴ってしまったんです。……そして妻に警察を呼ばれました。私は一方的な被害者ではなく加害者でもあることを認めます」