山田さんのように暴力を受けるケースも増えているという。森元弁護士が続ける。

「相談に来る方は、妻からDVを受けているなんて誰も信じてくれないし、別れられないと思っている方が大半です。身体的暴力がある事例では、暴力を目撃する子どもに悪い影響があるとして離婚もできるし、親権も取れることが多い。だからこそ悩んでいる方はぜひ1度、相談していただきたい」

 DVがひどくなれば家庭は壊れる。その中で育つ子どもにも当然、悪影響を与える。

 社会心理学者の新潟青陵大学の碓井真史教授は、

「観察学習といって子どもは見たものを学びます。身近で暴力を見ることで、それが当たり前だと自然に身につけるようになる」

 夫婦間のやりとりが子どもの成育を阻害するとも話す。

「子どもにとって親というのは全世界といってもいいぐらい絶対的な存在です。大好きな両親が、お互いに悪口を言っている場合、子どもは非常に不安定な精神状態になる」

 すると、子どもは自らを安定させようと、こんな行動にでることもあると続ける。

「うまく心のバランスを保つため、母親か父親どちらかの味方につくのです。しかし結局、両方の遺伝子を引き継いでいるわけですから、自分のルーツを否定することになる。すると理想の男性像や理想の女性像を持てなくなり、自分がどんな人間になればいいかわからなくなる。現れ方はさまざまですが、情緒不安定な子どもになる可能性も」

 前出の森元弁護士は、母親が子どもに父親の悪口を言わせるケースもあると話す。

「“バカ”とか“臭い”とか子どもを使うケースもあります。ただ加害者側は決まって、私にちゃんと向き合ってほしかった。愛情表現だったと話をします。客観的に見たら、全然愛情とは逆の行動ですよと思うんですけどね。不思議です」

 夫の会社に、夫が浮気をしているとウソの連絡をして、社内で問題となり降格人事を受けた男性もいたという。

 稼ぎ頭の夫を貶めておきながら、法廷の場で話す言葉は“愛している”“別れたくない”と主張するDV妻たちは理解の範囲を超える。今日もどこかで虐げられる夫の悲痛な叫びが聞こえる。