年間平均給与は420万円だが格差は広がるいっぽう
給与についてはどうか。国税庁の’15年の調査(平成27年民間給与実態統計調査結果の概要)によれば、年間の平均給与は420万円。実感が伴わない人も少なくないだろうが、前年に比べ1・3%増加している。
「平均所得は先進国の中で“中の下”ですが、1960年の実質賃金が今の5分の1だったにもかかわらず誰も不幸とは感じていませんでした。つまり問題は、平均所得の金額ではなく、所得者間で格差が拡大していること」
と森永さん。
そのからくりを、こう説明する。
「格差拡大は’80年代から続いていますが、かつては非正規社員という低賃金層が拡大する形でした。安倍政権以降の格差拡大は、株式や不動産で年収数億円以上の高額所得を得る者が爆発的に増える形で起きています。一方、庶民の実質賃金は第二次安倍政権が誕生した’12年以降、3・5%も下がっています。富裕層が成長の成果を独占しているからです」
賃金格差が著しいのは正規・非正規社員の間ばかりではない。男女間でも開きがあり、なかでも働く女性の6割を占める非正規は最も賃金水準が低く、雇用も不安定だ。
「日本が“同一労働同一賃金”になっていないのは、厳格にその制度を求める法律がないから。正社員と非正社員では転勤の受け入れや昇進などで責任の大きさが異なるという理由で、格差が容認されています。男女間についても同じ。格差が生まれる最大の原因は、女性に非正規社員が多いこと」(森永さん)
前述の年間の平均給与420万円を正規・非正規、男女で分けてみると、正規・男性539万円、正規・女性367万円、非正規・男性226万円、非正規・女性147万円になる。
消費生活アドバイザーの丸山晴美さんは、この状況を問題視している。
「シングルマザーの手取りも、平均200万円を切るくらいですよね。先日、東京・新宿で最低時給1500円を要求する若者たちのデモがありましたが、もう少し所得水準が上がらないと生活できない層がいるのは明らかです」
丸山さんの発言を裏づけるのが借金事情だ。金融広報中央委員会によると、借金のある世帯は、2人以上世帯では約4割。20代と70代は15%以上が「日常の生活資金」のために借り入れている。
「20代は基本給も低いし、ローンで自転車操業になっている人がほかの世代より多いのでは。高度経済成長を生き抜き、堅実に働いてさえいれば、ある程度は貯まったはずの70代で、この数字が出ているのは深刻。老後には3000万円以上は必要です。老後破綻を回避する努力を早めに始めて」(丸山さん)